[II-SY11-01] 【Keynote Lecture】学校心臓検診の心電図の重要性を見直す
Keywords:心筋症, 心電図, 学校心臓検診
不整脈疾患、特にQT延長症候群においては、学校心臓検診(心検)により予後が大きく改善されていることが報告されている。しかし、肥大型心筋症 (HCM) を始めとする心筋症においては心検による抽出が半数を占めるようになった現在でも予後が改善されたという報告がない。早期診断、早期介入が可能になれば、予後も改善できるかも知れない、という発想ができる。HCMの現行の心電図上の診断基準 (抽出基準) は心室肥大、ST/Tの変化、異常Q波である。ST/Tの変化、異常Q波で抽出した場合、組織学的変化がかなり進行している例があり早期診断には結びついていない。一方でHCMの頻度は数万人に1人であり、一般集団から数千人に1人程度 (1/2000~1/5000) を抽出する基準を考える必要がある。肥大判定基準(QRS波高基準) を作成するなら数千人以上の健常児心電図とHCM患児の心電図を収集し、その感度、特異度を検討する必要が出てくる。 そこで、心検を受診した小1、中1、高1の56,753人の心電図から48,401人の正常心電図を抽出し1,2)、中1で診断されたHCM患児の小1時の心電図との比較から、波高基準で早期抽出できないか検討した3)。正常心電図との比較からT波所見による催不整脈性右室心筋症の抽出基準4)、P波所見による拘束型心筋症の抽出基準も報告されている5)。 これらは全て、心検での心電図がなければ達成できなかった仕事になる。今後も小児期心疾患の抽出(診断)基準の再検討には心検心電図の収集、保存が重要になると考えている。1. Yoshinaga M, et al. Circ J. 2018;82:831. 2. 長嶋正實、吉永正夫、編.学校心臓検診のための小児心電図正常値ガイドブック.診断と治療社. 3. Yoshinaga M,et al. Circ J. 2021;86:118. 4. Imamura T, et al. Int J Cardiol. 2021;323:168. 5. Muraji S, et al. Heart Vessels. 2021;36:1141