[II-SY12-01] リアルとバーチャルの融合:3Dレプリカとコンピュータシミュレーションを用いた先天性心疾患手術の新たな支援システム"ped UT-Heart"の開発研究
Keywords:複雑先天性心疾患, シミュレーション, 医療機器開発
[背景と目的]複雑な先天性心疾患(CHD)の外科手術には、手術の解剖学的デザインを適切に行うことと、術後の血行動態を事前に正確に予測することが重要である。我々は患者のMSCT画像データから精密3D printingと真空注型技術を用いて、精密で切開・縫合が可能な超軟質心臓レプリカを開発した。2020年には多施設による医師主導治験を実施し、その有効性を証明した。今回は複雑CHDの手術支援を更に強固にすることを目的に、心臓レプリカの画像処理技術に東京大学で開発されたマルチスケールマルチフィジックス心臓シミュレーター“UT-Heart”の技術を融合させ、CHDに特化した新しい“ped UT-Heart”システムの開発研究を開始した。[方法]自施設小児CHD 7例(DORV 4、TOF 1、DORV 1、HLHS 1、中央値生後9ヶ月)の臨床データ(MSCT画像情報、心電図、心エコー、心臓カテーテルおよび心血管造影所見、肺血流シンチ)を用いて、“ped UT-Heart”システムの開発研究を後方視的に行った。心臓レプリカで作成した3D形状情報からCHD患者の有限要素心臓モデルを作成し、臨床データを付加して、患者の血行動態、壁運動、弁運動、電気生理をシミュレーションで再現した。[結果]シミュレーションによる心臓各部位の圧、酸素飽和度、Qp/Qs値は、概ね最大誤差20%の目標値に入り、様々な手術術式(BTシャント、RV-PAシャント、Norwood手術、右室流出路形成術、心内血流転換術)の血行動態を定量的に比較検討することができた。2022年にはこのシステムの有用性を評価することを目的に、多施設前向き特定臨床研究(15例)を開始している。[結論]リアルシミュレーション(心臓レプリカ)とバーチャルシミュレーション(ped UT-Heart)による形態と機能を融合したシステム開発は前例が無く、CHD手術のシミュレーションツールとして有用である。今後さらに改良を重ねることで、難治性複雑性CHDの手術を支援する理想的な医療機器となり得ることが期待される。