[II-SY13-02] 先天性心疾患の手術を行う施設の集約化に関する提言
Keywords:集約化, 安全かつ継続的な医療, 次世代育成
わが国には先天性心疾患手術施行施設が多数存在しているが、多くは年間手術数が50例未満の小規模施設である。手術症例数の少ない施設は症例数の多い施設と比較して手術死亡率が高く、高リスク症例のみならず中リスク症例においてもその差は無視できない。次世代育成という観点からも、小規模施設では充分な数の症例を経験することができず、新生児から成人までのあらゆる先天性心疾患患者に対して安全で良質な外科医療を継続的に提供するためには、一定以上の症例数と経験を有し切れ目のない次世代育成能力を有する多職種ハートチームの構築が望まれる。一方で小児心臓外科医の労働環境改善は遅れており、2024年度から始まる「医師の働き方改革」に準拠し得る施設は少ない。適格な多職種ハートチームが構築されないと小児心臓外科医の働き方改革は実現できない。現存する150の先天性心疾患手術実施施設すべてに働き方改革に準拠し得る体制の構築を期待することは現実的ではなく、拠点となる施設に多職種の医療従事者を集約化し、適格なハートチームが構築されている施設で多数例の手術が行われるべきである。今後、目指していくべき小児循環器医療体制は、「先天性心疾患手術を実施し、周術期医療を担う施設を拠点施設」とし、「手術を実施せずに主として診断、初期治療、亜急性期~慢性期医療、および日常の健康管理を担う施設を連携施設」とする。拠点施設と連携施設とからなる施設群によってそれぞれの地域の先天性心疾患の外科医療を包括的に担う。集約化後の拠点施設数は、おおむね50施設前後が妥当とみなされる。集約化を行うためには解決すべき問題点が数多く存在しており、一朝一夕に実現しうることではない。しかしながら「先天性心疾患を持って産まれた患者さん達に対して、新生児期から成人期まで安全かつ継続的な医療を提供する為に、手術を行う施設の集約化を推進していくことは必然かつ喫緊の課題である。