[II-SY17-03] 早期および遠隔期フォンタン循環の安定に向けた達成すべき至適術前心血行動態
Keywords:フォンタン手術, 至適術前心血行動態, 総死亡
【背景】単心室循環患者に対するフォンタン(F)手術後早期成績は近年飛躍的に向上したが、特定の症例ではこのF循環に到達困難な場合や、F循環に到達したがその長期安定が得られず不幸な転帰を取る場合もある。しかし、F手術前の病態とF遠隔期成績の関連は不明な点も多い。【目的】 F手術前とF手術後遠隔期の病態を比較し、患者背景を含めたF手術前に到達すべき心血行動態的具体的条件を探ること。【方法】当院でF手術が施行され術後1年以上経過した連続502例中当院で経過観察した451例を対象とした。F手術直前の患者背景と心血行動態を含めた病態と術後経過15年以内(早期群, n = 199)と15年以降(遠隔期群, n = 252)の総死亡との関連を評価した。【結果】術後経過で早期群77例、遠隔期群21例が死亡していた。術後早期群では右相同心、遅いF手術(cut-off値:3.0歳、以下同様)、F術前の大きな体心室拡張末期容積指数(EDVI:108 ml/m2以上)、低い体心室駆出率(53%以下)、高い肺動脈圧(10 mmHg以上)、高い肺血管抵抗(Rp:2.0 U·m2以上)、高いヘモグロビン(Hb:15.0 g/dl以上)、低い動脈酸素分圧(SaO2:81%以下)が術後早期の死亡と関連した(p<0.01-0.0001)。多変量解析ではHb 、EDVI、右相同心とRpが独立に関与した(p<0.05-0.0001)。一方、遠隔期群では、F術前の心機能と総死亡と関連せず、左相同心、遅いF手術(3.9歳以上)とF術前の高いHb(17.3 g/dl以上)が術後遠隔期の総死亡と関連し、いずれも独立因子であった(p<0.05)。【結論】F手術前の心室容量負荷の解除(108 ml/m2未満)とRp降下(2.0 U·m2以下)が術後早期死亡軽減に大きく寄与することを再確認したが、これら要因は良好な術後遠隔期生存を保証しなかった。一方、3歳までのF循環達成とそれまでの多血解除(15.0 g/dl未満)が早期のみならず遠隔期の良好な生存率向上に関連する。