The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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シンポジウム

シンポジウム18(II-SY18)
COVID-19 pandemicを踏まえ、改めて川崎病の原因を考察する

Fri. Jul 22, 2022 8:30 AM - 10:00 AM 第5会場 (中ホールB)

座長:小林 徹(国立成育医療研究センター データサイエンス部門)
座長:濱田 洋通(千葉大学大学院 医学研究院小児病態学)

[II-SY18-01] 指定発言:疫学像から見た川崎病の原因仮説

中村 好一 (自治医科大学 公衆衛生学教室)

Keywords:川崎病, 原因論, 疫学

川崎病の疫学像から川崎病の原因として「微生物のトリガーとしての関与+ホスト側の要因」を仮説として提唱している。微生物の関与は、(1)過去3回の全国的な流行、(2)季節変動、(3)年齢分布、(4)地域集積性、(5)同胞例の存在、(6)小地域単位での流行、などが背景として存在する。特にわが国では1月に患者が多く、夏場にも少し多いのに対して、国際的に見ると流行時期が異なる(韓国や台湾では3月~5月)。このことから特定の微生物の直接の感染ではなく、複数の微生物(国に見ると国・地域に特有の)の1つがトリガーとなっているとすると、疫学像の説明ができる。ホスト側の要因として、(1)予防接種がない時代の麻疹や水痘の罹患率と比較して低い罹患率、(2)人種差、(3)同胞例や親子例の存在などが挙げられる。すなわち、susceptibleな個体に対して数種類の微生物の1つがトリガーとして作用して川崎病が発生すると考えると、疫学像の説明がつく。 そこにわが国では2020年当初より始まったCOVID-19の流行である。2021年に実施した第26回川崎病全国調査では、2020年の患者数は2019年の約2/3に減少した。しかも患者の減少はコロナが蔓延し始めて、緊急事態宣言が出された時期と一致する。COVID-19が川崎病患者減少に寄与したことは間違いないが、その背景として考えられるのは(1)大人の外出などが減少し、このためにトリガーとなる微生物を家庭内に持ち込む機会が減少した、(2)手洗いや消毒などの手指衛生の徹底によりトリガーとなる微生物が不活化した、の2つの可能性がある。現在、このあたりを明らかにするために人の動きのデータと川崎病発生の関連などの解析を行っている。コロナ禍を奇貨として、川崎病の原因に1歩でも近づくことができれば、幸いである。