[III-OR26-04] 周産期低酸素刺激によるSuHxラットの致死的閉塞性肺血管病変:肺動脈平滑筋細胞における過増殖および炎症性表現型と関連DNAメチル化ステータス
Keywords:肺高血圧, 周産期低酸素, エピジェネティクス
【目的】肺動脈性肺高血圧症(PAH)は進行性かつ致死的な疾患である。SUGEN/Hypoxia(SuHx)ラットはヒト様の閉塞性肺動脈病変(PVD)を再現したモデルだが、ヒトのPAHとは異なり致命的ではなくむしろ長期的には可逆的であるという限界がある。我々はPAHの発症、増悪に寄与する因子を悪化させることで致死的かつ進行性の新しい動物モデルを構築できないか検討した。胎児発育不全を起こす周産期低酸素(PeriHx)はSuHxラットのPVDを悪化させるか検証し、そのメカニズムを検討する。【方法】周産期の低酸素暴露によりPeriHxラットを作成した。7週齢でSUGEN投与と低酸素暴露を行い15週齢のSuHxラットを作成した。PeriHxの有無にSuHx処置をかけ合わせた4群を作成し(N=40)、15週齢で血行動態と肺血管形態を解析した。追加実験で7週齢のPeriHxラットで循環動態、血管病変(N=8)を解析し、培養継代した肺動脈平滑筋細胞(PASMC)における増殖能、炎症誘発性(N=12)、網羅的DNAメチル化解析(N=6)を行った。【成績】PeriHxは15週齢のSuHxラットの体重増加率、生存率(60%vs100%)、RVSP、RVSP/AoSP、RV/LV+IVS(<.001)と閉塞性血管病変率、叢状病変率、中膜肥厚(<.005)を悪化させた。PeriHxは7週齢健常ラットで体重、血行動態、PVDの各指標に影響なく、継代PASMCの増殖能と炎症誘発性を亢進(<.005)させた。PeriHxはDNAメチル化解析により35の異なるメチル化領域が同定され、その一つであるホスドシン様タンパク質(Pdcl)をコードする領域におけるメチル化はPeriHxのPASMCsにおけるPDGF-BB誘発のPdcl mRNAの発現低下と関連していた。メチル化領域の機能濃縮解析により、細胞増殖や炎症過程(Wnt5AやROR1)との関係が明らかになった。【結論】PeriHx刺激とSuHx処置により致死的なPAHラットモデルを作成した。継代PASMCsにおける表現型変化と機能的に関連するDNAメチル化の差異が、致命的な閉塞性PVDの原因となる可能性がある。