[III-OR26-03] Bidirectional Glenn術後症例における肺動脈外膜vasa vasorum増生とFontan術後の短期・長期予後に関する検討
Keywords:Fontan手術, 肺動脈, vasa vasorum
【背景】肺血流量低下や低酸素血症を呈する状態では体肺側副血管および肺動脈外膜のvasa vasorum (VV)が増生することが報告されており、同病態が両方向性グレン(BDG)術後患者の病態・予後にも関係している可能性が考えられる。体肺側副血管はFontan術施行において大きな問題となる。さらにVV増生は肺血管リモデリングへの関与が知られており、肺循環の血管機能の予後に影響を与えることが推察される。【目的】BDG術後症例の肺動脈外膜vasa vasorum増生の程度はFontan循環の予後に影響するか否かを検証した。【方法】BDG術後患者(BDG群) 12例(1.7±0.4歳)、正常肺動脈圧症例(Control群) 20例(1.5±0.3歳)を対象とした。光干渉断層像(OCT)を用いて肺動脈壁厚(内中膜厚)および血管外膜におけるVVの面積率(VV area ratio)を血管径2.0-2.5mmの肺動脈において計測した。さらに、BDG群12例をVV増生が高度であった症例群(VV severe群)6例と増生が軽度であった症例群(VV mild群)6 例に2分割してFontan術後の予後を検討した。【結果】肺血管壁厚においてはBDG群とControl群で有意差は無かった (0.12±0.03mm vs. 0.13±0.02mm)。VV area ratio はBDG群において有意に高かった(14.5±3.5% vs. 5.3±1.6%; p<0.0001) 。BDG群をVV severe群(19.5±5.5%)、VV mild群(9.5±2.8%)に分類した。VV severe群とVV mild群では、TAPVC合併症例が2例 vs 0例、SpO2 78±5 vs 83±6% (n.s.) 、PA index 137±25 vs 214±21 (p<0.05)、Rp 2.0±0.3 vs 1.8±0.6Um2 (n.s.)であり、Fenestration作成は2例 vs 0例であった。Fontan術後の心拍出量(CI) 2.7±0.3 vs 3.1±0.4 (n.s.)、CVPは13.5±2.5 vs 10.7±2.0 mmHg(p<0.05)であった。【考察】VV増生が将来的な血管リモデリングや心血管機能、Fontan循環の予後規定因子として有用かは長期的観察が必要であるが、肺動脈の経時的観察・病態把握には有益である。