[III-OR28-03] ミトコンドリア活性化心筋幹細胞移植療法の臨床応用に向けた取り組み
キーワード:心筋幹細胞移植療法, ミトコンドリア, ドラックデリバリーシステム
【背景】心筋幹細胞移植療法は心不全に対する治療選択肢となる可能性があるが、臨床応用に向けては治療効果を含め多くの課題が残されている。治療効果の向上に向けて我々はミトコンドリア(Mt) 標的ドラックデリバリーシステムであるMITO-Porterを用いて、移植用細胞のMtに薬剤を選択的に送達しMt機能を強化した移植用心筋幹細胞(MITO Cell)の開発および臨床応用を目指している。これまでにドキソルビシン心筋症および虚血再灌流モデルマウスに対して、抗酸化物質であるresveratrolを封入したMITO-Porter(res-MITO-Porter)を用いて調製したMITO Cell移植を行い、心不全発症の予防および治療効果を報告している。MITO Cellの臨床応用を実現するためには新型コロナウイルスのワクチン製造にも応用されているマイクロ流体デバイスの様な手法を用いてMITO-Porterを大量調製する必要がある。しかし、前述のres-MITO-Porterはマイクロ流体デバイスでは調製できないという課題に直面した。【目的】マイクロ流体デバイスを用いて調製に成功していたcoenzyme Q10(CoQ10) を封入したMITO-Porter(CoQ10-MITO-Porter)を用いて、ヒト心筋幹細胞のMt機能が強化できるかを検証した。【方法】右室流出路狭窄を伴う先天性心疾患根治術時の切除心筋からヒト心筋前駆細胞(human cardiosphere-derived cell : hCDC)を単離し、Seahorse XF Analyzerで測定した酸素消費速度をもとに細胞のMt機能を評価した。【結果】CoQ10-MITO-Porterを用いて調製したMITO Cell (CoQ10-MITO Cell)はhCDC(未処理細胞)と比較して有意に酸素消費速度が上昇しており、CoQ10-MITO-Porterにより心筋幹細胞のMt機能が亢進した。【結論】大量調製可能なCoQ10-MITO-PorterでもMITO Cellを製造できる可能性が示唆された。今後はラット心筋虚血再灌流モデルに対するCoQ10-MITO Cellの治療効果を検証する。