[III-OR30-01] 川崎病既往成人剖検例における冠動脈瘤および非瘤部の組織学的検討
Keywords:川崎病, 冠動脈瘤, 病理
【目的】遠隔期川崎病の冠動脈に生じる血管炎後遺病変と粥状硬化症との関連について、病理所見をもとに考察する。【方法】川崎病既往のある9成人突然死剖検例のうち、冠動脈瘤のない4例については2020年の本学会にて報告し、炎症瘢痕が明らかでない冠動脈に粥状硬化症が加わっていたことを示した。今回は、冠動脈瘤のある5例(年齢19~44歳、男性4例、女性1例)を検索対象とした。川崎病全国調査成績を用いた急性期情報、剖検時のBMI、冠危険因子を調査した後、剖検にて得られた冠動脈の組織所見を瘤部と非瘤部とにわけて検討した。【結果】1)冠動脈瘤はRCA 5例、LMT~LAD 3例に認められ、LCxには存在しなかった。RCAの瘤は持続性拡張病変3例、再疎通病変2例で、LMT~LADは持続性拡張病変2例、再疎通病変1例であった。瘤壁には全枝に高度の石灰化を伴っていたが、AHA分類IV型以上の進行した粥状硬化症が認められたのは1例のみであり、AHA分類II型に相当する泡沫細胞の小集簇巣が2例にみられた。2)非瘤部は全枝に川崎病血管炎の後遺病変として矛盾しない内膜の求心性線維性肥厚があり、さらにその内腔側には時相の異なる線維化が層状に認められた。肥厚内膜の最表層には数枝に泡沫細胞の小集簇巣、板状線維化、石灰化が局所的に観察された。一方、2例においては偏心性内膜肥厚の深部にAHA分類IV型以上の粥腫が観察され、うち1例は粥腫破綻による血栓閉塞を来たしていた。【まとめ】瘤部に粥状硬化症は生じるものの、その頻度は少なかった。一方、瘤形成症例の非瘤部には後炎症性変化としての全周性肥厚内膜に様々な程度の粥状硬化症が加わっていることが明らかとなった。また、非瘤部の内膜表層には内膜びらん後の血栓器質化と思われる時相の異なる層状線維化や石灰化が散見され、瘤部だけでなく非瘤部でも持続的に内皮障害が生じている可能性が考えられた。