[III-OR30-03] 当院で経験した小児期発症冠攣縮性狭心症の3例
Keywords:冠攣縮性狭心症, アセチルコリン負荷, トロポニン
【緒言】冠攣縮性狭心症は、冠動脈の過収縮により一過性に冠血流を低下させ、心筋虚血を引き起こす。50-70代に発症することが多く、小児例は稀で、早期診断が困難なことがあり、心筋梗塞や心肺停止に至ることもある。【症例1】Duchenne型筋ジストロフィーの14歳男児。深夜2時頃より絞扼感を伴う胸痛のため受診した。II,III,aVF,V5-6誘導でST上昇、トロポニンT 2.05ng/mLと陽性で、緊急で冠動脈造影を施行したが有意狭窄はなかった。後日改めてアセチルコリン負荷試験を施行し、右冠動脈に有意狭窄を認め冠攣縮性狭心症と診断した。【症例2】生来健康な13歳男児。深夜4時頃より絞扼感を伴う胸痛が間欠的に持続したため受診した。心電図変化は顕著ではなかったが、トロポニンT 1.24ng/mLと陽性であった。アセチルコリン負荷試験を施行し、左前下行枝に有意狭窄を認め冠攣縮性狭心症と診断した。【症例3】生来健康な13歳男児。深夜1時頃より絞扼感を伴う胸痛のため近医を受診した。II,III,aVF,V1-6誘導でST上昇、トロポニンI 74009.0pg/mLと陽性であった。心膜炎からの炎症波及と判断され、アスピリン内服で加療された。発症1か月後に転居のため紹介となり、その後も月に1-2回、夜間に胸部症状がみられた。アセチルコリン負荷試験を施行し、左冠動脈に有意狭窄を認め冠攣縮性狭心症と診断した。3症例とも、Ca拮抗薬内服を開始し観察中である。【考察】小児期の胸痛の多くは良性特発性胸痛で、心原性胸痛は1-5%程度とされる。しかし、夜間から早朝にかけての絞扼感を伴う胸痛は冠攣縮性狭心症を示唆するred-flagとなりうる。心電図や心エコー図では異常を示さない症例もあり、小児においても夜間の絞扼感を伴う胸痛発作で、トロポニン含む心原性酵素上昇を伴う際には早期に冠攣縮誘発試験を考慮する必要がある。