[III-OR36-05] コンピューター流体シミュレーションを用いた心尖部下大静脈同側症例におけるフォンタン手術時の導管経路の検討
Keywords:流体シュミレーション, フォンタン, 心尖部下大静脈同側
【目的】フォンタン手術の成績は昨今の医療技術の進歩により格段に改善したものの術後些細な要因で循環破綻を来たす例が少なくない。特に心尖部下大静脈同側(Apicocaval juxtaposition, ACJ)の解剖学的特徴をもつ稀なフォンタン循環では下大静脈と肺動脈間の心外導管に伴う肺静脈圧迫や心室や椎体による心外導管圧排に留意するだけでなく、導管経路の延長・湾曲による経時的なエネルギーロスやグレン吻合とのoff-setの問題など様々な要因を考慮しなければいけない。【目的】周術期撮像した造影CT画像データをもとにコンピューター流体 (CFD:Computational Fluid Dynamics)解析を行いフォンタン循環の血流状態を可視化・定量化する事でACJ症例での血管内皮への力学的ストレスや将来的な病態変化を予測し得る新たな解析法を検討した。【方法】2001年からACJを伴う機能的単心室症例に対しフォンタン手術を行った連続16例の後方視的検討と、心尖部と同側 (Ipsi:Ipsilateral route)及び心尖部と対側(Contra:Contralateral route)に導管通路を作成した各1名の患児でフォンタン循環における血流分配・壁ずり応力・血流の淀み・エネルギー効率、手術経路と異なるIpsi・Contra導管通路での仮想血流シミュレーションのCFD解析を行った。【結果】全16例ともに導管経路による手術成績の差異はなくNYHA class1~2で経過観察中。CFD解析を行ったContraルート及びIpsiルートともに仮想対側ルートの方が下大静脈から両側肺動脈への血流分配で左右差が著しく、遠隔期の肺動静脈瘻発生を危惧すべきルートであると推測し得た。【考察】数少ない本結果からではあるが、症例毎のCFD解析がACJ症例におけるフォンタン手術時の導管通路選択の重要なKey elementになり得るものと推測された。今後はCFD解析時における形状作成や境界条件の更なる正確性を追求し、症例の蓄積をもとに複雑なフォンタン循環における予測医療の基盤を構築していきたい。