[III-P6-2-01] Fontan患者の体肺静脈側副血行路の経時的変化とリスク因子についての検討
Keywords:Fontan術後, 体肺静脈側副血行路, 遠隔期合併症
【背景】体肺静脈側副血行路(Veno-Venous Collateral;VVC)はFontan術後遠隔期の合併症として高頻度に認められ、チアノーゼ増悪の原因のひとつである。しかし、VVCの臨床経過についての報告は限られている。【目的】VVCの経時的変化とリスク因子について検討する。【対象】2005年1月1日から2009年12月31日に当院にて初回Fontan手術を施行し、2022年1月31日までに術後遠隔期のカテーテル検査を施行した患児63例。【方法】1.Fontan術後1年、遠隔期の血管造影よりVVCの発生頻度を検討した。血管の最大径が4mm以上をLarge、4mm未満をSmallと定義した。2.遠隔期のLarge VVCの有無を目的変数、Fontan術前のカテーテル検査結果【肺動脈圧(mmHg), 心室拡張末期圧(mmHg), 心房圧(mmHg), 大動脈酸素飽和度(%), 肺血管抵抗(U/m2), 肺動脈係数, 心係数(L/min/m2)】を説明変数とし、ロジスティック回帰分析を行い、Large VVC発生に寄与するリスク因子を抽出した。【結果】1.術後1年の血管造影でSmallが27例、Noneが36例であり、Largeは認めなかった。遠隔期ではLargeが12例、Smallが38例、Noneが13例であった。遠隔期にLarge VVCを認める患者のうち、7例(58%)が術後1年時にSmall VVCを認めており、いずれも増大していた。2.ロジスティック回帰分析ではLarge VVC発生に寄与する有意なリスク因子はQs(p=0.0228)、PAI(p=0.0414)であった。【考察】Glenn循環からFontan循環に切り替わると、心室の前負荷はかかりにくくなり、心拍出量の低下を招く。Fontan術前よりQsが低値である症例は心拍出量を保つためにVVCが発達すると考えられた。また、肺血管床が乏しい症例は中心静脈圧が上昇し、高圧の体静脈系から低圧の肺静脈、左房系へのVVCの発育を促進すると考えられた。【結論】Fontan術前のカテーテル検査でQs、PAIが低値であった症例は遠隔期にLarge VVCが発達するリスクが高かった。VVCは経時的に増大する傾向があった。