[III-P6-2-07] 小児期フォンタン循環におけるフォンタン関連肝障害の頻度
キーワード:フォンタン, 肝障害, 肝機能障害
【背景】フォンタン関連肝障害(FALD)はフォンタン術後の重要な臓器合併症であり、長期間継続する静脈うっ血が肝障害を惹起するとされる。一方、循環不全に伴って、あるいは肝炎によって肝機能障害を併発しながら障害が進行することも知られ、肝線維化を発症する以前から肝機能障害が先行する症例も想定される。我々はフォンタン術後早期から肝障害が存在するという仮説を検証した。【対象と方法】定期心臓カテーテル検査を行ったフォンタン患者連続17例と同時期に評価した非フォンタン患者を対象とした。慢性心不全における鋭敏な肝障害指標であるICGを用いて肝予備能を評価し、循環指標との関連を解析した。【結果】非フォンタン症例およびフォンタン症例の年齢はそれぞれ11.2±6.7歳、10.4±4.0歳であった。非フォンタン症例のICG15分値は全例10%以下であり、ICG消失率kは0.12以上であった。一方、フォンタン症例ではICG15は14例 (82%)が10%未満 (p=0.0080)、k値は12例(71%)が0.12未満 (p=0.042)であった。ICG15、k値ともに検査時の心拍出量、中心静脈圧、血圧、肝静脈楔入圧等と特定の傾向を認めなかったが、フォンタン症例においてICG15は加齢に伴い上昇する傾向を認めた(p=0.026)。またICG消失率kは年齢やその他血行動態指標との関連はなかったが、ICG濃度から実測した循環血液量と負相関を示した (p=0.015)。【結論】フォンタン症例では小児期早期より肝障害の頻度が高く、年齢とともに増悪する。消失率kは年齢および血行動態指標と関連しなかったが、循環血液量増加をはじめとするフォンタン循環への適応がICG排泄遅延に影響を与える。FALDはフォンタン遠隔期の循環調節に重要な役割を果たす可能性があり、小児早期肝障害予防がFALDの病態形成とフォンタン不全予防に寄与する可能性がある。