[III-P6-3-10] 外傷性腕頭動脈仮性動脈瘤に対するステントグラフト治療
Keywords:外傷性大動脈損傷, 腕頭動脈仮性瘤, ステントグラフト
【背景】外傷性大動脈損傷(BAI)は致死的であり、切迫破裂のリスクがある場合は早急に治療を要する。今回、多発外傷を伴う腕頭動脈(BCA)損傷に対してステントグラフト留置術を施行し、良好な転帰を得られた症例を経験したので報告する。【症例】8歳女児。学校からの帰宅途中、軽乗用車に胸部と両上肢を轢かれ受傷し、前医に救急搬送。造影C Tで腕頭動脈仮性瘤、縦隔気腫、両側肺挫傷、左血気胸が認められた。動脈瘤に対する外科治療が必要と判断され、挿管、胸腔ドレーン留置後に当院PICU搬送となった。可及的早期の介入が望ましいが、人工血管置換術は体外循環・抗凝固薬を用いる必要があり、肺挫傷からの出血・DICをより悪化させるため危険であると判断した。受傷同日は保存的治療を行い、翌日に低侵襲で施行できるカバードステント(VBXバルーン拡張型ステントグラフト)を留置する方針とした。大動脈造影で、動脈瘤は腕頭動脈起始部に9×10mm、腕頭動脈径 6-7mm、腕頭動脈起始から鎖骨下動脈分岐までの距離 30mmであったため、VBX 7mm×29mmを選択し留置した。しかし、確認造影で腕頭動脈起始部より仮性瘤内への造影剤のLeakを認め、Landingが不十分であったため、VBX 8mm×29mmを大動脈弓部に少し飛び出る形で追加留置した。 再留置後の造影では仮性動脈瘤へのleakはなく、手技終了とした。留置中、留置後に合併症なく、その後は徐々に全身状態の改善得られ、第18病日に退院となった。現在、アスピリン内服継続し、外来フォロー中である。【結論】動脈瘤に対する人工血管置換術は確実な治療法ではあるが、合併外傷に伴う出血性合併症のリスクが高い。そのため、低侵襲な経皮的カバードステント留置術は多発外傷患者の大動脈損傷において有用な選択肢と考える。