[III-P6-5-04] 先天性心疾患の術後管理における遠隔ICUシステムの導入
Keywords:遠隔ICU, 周術期管理, 集中治療
複雑先天性心疾患ではしばしば術後ICU管理に難渋するが、市中病院では十分な数の集中治療専門医が確保できないことも多い。心臓外科医は、循環管理経験は十分積んでいるものの、呼吸・栄養・感染管理等においては集中治療医に比し知識や技術が及ばないことも多い。一方、働き方改革の期限は2024年に迫り、術後ICUにおける患者の安全性確保と医療従事者の働き方改善の両立が求められている。ICU常駐の集中治療医が確保困難な当院では、倫理委員会承認のもと2021年3月より近隣大学病院集中治療科との遠隔ICUを導入した。情報通信安全対策にAnyConnect(Cisco社)、電子カルテ端末表示にWorkspace(Citrix社)、会議用ツールにWebex(Cisco社)[定期カンファ(計画的ケアモデル)]とLINE WORKS (Works Mobile社)[各種連絡や臨時症例相談(緊急時対応モデル)]を用いた。2022年1月までに23症例32手術、のべ102日のカンファを開催した。個人情報保護や医療安全面の問題はなかった。遠隔ICUで治療連携を行った1例を報告する。【症例】TGA, Mustard術後の38歳女性。産後洞不全症候群にて前医でペースメーカーを移植した10ヶ月後リード感染およびIEにて当院転院。DIC, ARDSであり準緊急で疣贅除去+ペースメーカー交換術を施行。術直後より大学病院と遠隔ICUで連携。呼吸管理等が奏功し抜管したが、術後緑膿菌感染から状態悪化し13PODに再挿管、18PODにVV-ECMO導入し集学的治療目的に大学病院へ転院。耐性緑膿菌制御に時間を要したが122PODに当院を経て紹介元に転院した。特殊血行動態の共有により感染増悪・急変時にも遅滞なく高度集中治療を連携できた。【考察】先天性心疾患に詳しい集中治療専門医が不足し、先天性心疾患手術施設の集約化が進まない日本では、遠隔ICUは市中病院の医療水準の向上に寄与するだけでなく、働き方改革においても有効な解決策になり得ると期待される。症例蓄積による遠隔ICUの安全性と有効性の向上を図りたい。