[III-P6-5-05] 小児心臓手術における手術部位感染の術前リスクについての検討
Keywords:先天性心疾患, 手術部位感染症, 周術期管理
【背景】手術部位感染(以下SSI)は、小児心臓手術の1.7-8.0%に生じ、長期間の治療を必要とする。先行研究によりMRSA保菌や二期的胸骨閉鎖などのリスク因子が指摘され、SSIへの感染対策は発展を遂げてきた。しかし、SSIの発症は未だに多く、小児心臓手術後の主要な合併症の1つである。【目的】小児心臓手術におけるSSI発症の術前リスクを明らかにする。【方法】後方視的研究。当院にて2015年1月から2021年3月に胸骨正中切開による心臓手術を行った18歳未満の手術を対象とした。SSIの診断は、Centers for Disease Control and Preventionの指針に準じた。縦隔洞炎以外の臓器SSI、術後30日以内の死亡、前回手術から30日以内の追加手術は、解析から除外した。性別、日齢、身長、体重、Body Mass Index、遺伝子異常および奇形症候群、胸骨正中切開の既往、頸部・胸部・腹部デバイス、MRSA保菌、術前入院期間、術前24時間以上の人工呼吸器管理、について検討した。【結果】対象手術は402件、303症例。SSIは16件(4.0%)だった。起因菌は、Staphylococcus aureus 10件、Pseudomonas aeruginosa 3件、その他3件だった。術前の人工呼吸器管理(Odds ratio 5.0、95%信頼区間 1.5-16.8、p=0.019)、胸骨正中切開の既往(Odds ratio 3.0、95%信頼区間1.1-8.2、p=0.032)が、SSI発症に影響する因子だった。初回開胸に比べ、再開胸では、Staphylococcus以外によるSSIが多い傾向にあった(Staphylococcus以外の菌種によるSSI:初回開胸 8件中1件、再開胸 8件中4件)。【考察・結語】術前に人工呼吸器管理を行った症例では、従来のMRSAに対する鼻腔培養およびムピロシン鼻腔内塗布による除菌処置では不十分な可能性があり、吸引痰培養の実施、検出菌由来のSSIへの警戒が必要である。再開胸例では、Staphylococcus以外の保菌状況の把握、検出菌への対策が必要である。