[III-P6-5-06] デクスメデトミジン中止後に痙攣発作を疑う眼球運動異常を呈した小児例
Keywords:デクスメデトミジン, 離脱症状, 神経症状
【はじめに】デクスメデトミジンは小児に使用できる新たな鎮静、鎮痛薬として使用されてきた。投与中止による離脱症状も目立たないとされていたが、長期使用例に離脱症状の報告例が散見される。今回デクスメデトミジン中止後に痙攣発作を疑う眼球運動異常を認めた症例を経験した。【症例経過】1歳2ヶ月の男児。両大血管右室起始症、肺動脈狭窄症。低酸素血症が進行しBTシャント術を4か月時に施行し、今回心内修復術を施行した。術後に心房性頻拍を認めフェンタニル、ミダゾラム、デクスメデトミジンを使用し鎮静した。術後4日に抜管し、術後5日にフェンタニル、術後7日にミダゾラムを漸減中止した。術後9日にデクスメデトミジンを中止したところ、嘔吐、発汗を認め徐々に不機嫌となった。中止後約6時間で四肢の細かなピクツキと眼球運動異常を認めた。呼吸循環は保たれ、血液検査でも異常を認めなかったが痛み刺激に対する反応は乏しかった。開心術後であり、頭部CTおよびビデオ脳波モニタリングを施行した。頭部CTでは出血等の異常を認めず、ビデオ脳波モニタリングでは眼球運動は両眼の内側上方偏視であり、眼球運動異常時に明らかな異常脳波は確認できず痙攣発作は否定的であった。このためデクスメデトミジンの離脱症状を疑い再度デクスメデトミジンを少量で再開したところ、四肢のピクツキや両眼の眼球運動異常は消失し、その後入眠した。覚醒後も同症状は認めず、その後デクスメデトミジンは再度日数をかけ漸減中止し、症状の再発を認めなかった。【まとめ】先天性心疾患の周術期にデクスメデトミジンを中止後、筋緊張亢進・発汗・消化器症状など既報の離脱症状以外に眼球運動異常を認めた。薬剤の中止にあたり重大な中枢神経障害時と類似した眼球運動異常を惹起する可能性があり、注意深い薬剤減量と観察が必要と考えた。