[III-P6-5-08] 新生児期・乳児早期の心臓手術後難治性乳び胸に対するミノサイクリン(MINO)を用いた胸膜癒着療法
Keywords:ミノサイクリン, 乳び胸, 胸膜癒着療法
【背景】新生児期・乳児期の難治性乳び胸は死亡率が高い重要な術後合併症である。MINOによる胸膜癒着療法は成人領域で高い有効性が知られているが、小児に対する使用経験は少なく、特に中心静脈圧上昇をしばしば伴う先天性心疾患術後の有効な管理に寄与するかは不明である。 【方法】難治性乳び胸に対するリンパ管造影治療が奏功しなかった経験から、標準的治療不応例に対し、救命目的にMINOによる胸膜癒着療法を行っている。臨床経過を総括し、同時期に経験した術後乳び胸の経過と比較検討した。【結果】症例の内訳は、超低出生体重(修正29週993g)・両大血管右室起始症に対する姑息的動脈管クリップ手術後、極低出生体重(修正28週1159g)・右室容量負荷を伴う心房中隔欠損症例に対する動脈管クリップ手術後、大血管転位型両大血管右室起始症に対する大血管スイッチ手術後 (正期産、日齢17)、房室錯位・肺動脈閉鎖を伴う機能的単心室症に対する両方向性グレン手術後 (生後5か月)であった。いずれもMCTミルク、絶食、水分制限、オクトレオチド、ステロイド、XIII因子製剤等の標準的治療に関わらず50~80ml/kg/dayの乳び胸水を認め、進行性低ガンマグロブリン・蛋白血症を改善しえず、危急的病態と判断した。文献を参考に、2~8mg/kg/doseのMINOを胸腔内投与したところ、初回ないし2回目投与翌日までに胸水減少・利尿改善が得られ、追加投与で緩解に至った。MINO非使用例と比較すると胸水量は顕著に多く、また持続期間も長かったが、MINO開始後には循環安定と利尿改善が得られ、低蛋白血症是正が可能となった。約2年の観察期間中に明らかな副作用はない。【結論】MINOによる胸膜癒着療法は先天性心疾患術後難治性乳び胸に対する循環動態改善と乳び胸緩解に寄与する。