[III-P6-6-11] ミトコンドリア心筋症が疑われたが、剖検心筋組織からEBウイルスが検出された劇症型心筋炎の一例
Keywords:リンパ球性心筋炎, EBウイルス, 心筋生検
【背景】急性心筋炎と感染契機による心筋症の増悪は鑑別に苦慮することがある。今回、ミトコンドリア心筋症が疑われたが、剖検でEBウイルス(EBV)による劇症型心筋炎と診断した症例を経験した。【症例】15歳女児。乳児期の胃腸炎罹患後に脳性麻痺を発症、知的障害・てんかんあり。家族歴なし。入院の3週間前から発熱を認め、数日前から咳嗽あり。入院日の朝に嘔吐で前医受診。血圧測定不能、心エコーで心収縮不良。急性心筋炎として気管挿管、アドレナリン投与、右鼠径部からPCPSを導入後に当院へ転院搬送。入院時現症:心拍150回/分、血圧83/57mmHg、末梢冷感著明、右下肢は暗紫色に変色。心エコーで左室駆出率 11%、心室壁の輝度上昇と左室壁肥厚、心嚢水貯留あり。心電図はST上昇なし。血液検査でWBC 5060/uL, CRP 2.01mg/dL, AST 2039IU/L, ALT 101IU/L, LDH 6914IU/L, γGTP 101IU/L, TB 1.7mg/dL, NH3 203ug/dL, Glu 190mg/dL, Lac 14.3mmol/L, BNP 1334pg/mL, TnT定性(-)。治療経過:入院日、右下肢虚血が疑われcentral ECMOへ移行、免疫グロブリン投与。ミトコンドリアカクテル療法も実施。入院5日目、左室ベント追加。入院10日目、左室機能の回復ありECMO離脱。しかし心機能の改善にも関わらず肝障害、腎障害、乳酸アシドーシスの経時的進行あり入院13日目に死亡。検査所見や既往歴、治療経過からミトコンドリア心筋症が疑われたが、剖検では心筋組織に強い心筋融解像とリンパ球浸潤を認めた。電顕でのミトコンドリア形態評価は不能であったが,酵素活性測定でミトコンドリア病は否定的。心筋組織からEBVが検出され、EBVによるリンパ球性心筋炎と診断。【考察】劇症型心筋炎様に発症するミトコンドリア病を時に経験するが、本症例はミトコンドリア心筋症を臨床的に疑ったものの剖検でEBVによる急性心筋炎と判明した。EBV感染により肝障害などの病態を修飾した可能性があり、代謝性疾患との鑑別が困難であった。