[III-SY19-05] 外科医が知っておくべき外保連の取り組み -- 先天性心疾患外科治療における現状と課題
Keywords:先天性心疾患治療, 小児医療の特殊性, 診療報酬
本における医療制度は病医院へのフリーアクセスと国民皆保険を前提とし、廉価かつ高度な医療を提供してきた。そして、超高齢化社会に伴い増大する一方である医療費への抑制圧力は強く、医療費総額は増やさない「ゼロ・シーリング」が事実上、国家予算の前提となっている。この原理下では、ある診療行為の報酬を上げれば、同一分野で他を下げることにつながるといった会員間での利益相反を生じる可能性がある。小児の医療、とりわけ小児の心臓病治療において、先天性心疾患の診断の複雑さ、手術の難易度、集中治療を含めた周術期管理の特殊性などにわれわれ日本小児循環器学会会員は日々直面している。要するに「小児がゆえに手間のかかる」事柄の多さは医療者にとっては周知の事実である。こうした「手間」を各人の犠牲的精神により請け負うことを無形の努力とするならば、これらをどのように有形の診療報酬に反映させることができるだろうか。ゼロ・シーリングの原理が働いている現行の診療報酬制度において、こうした先天性心疾患治療の特殊性と課題が即座に配慮される期待は薄い。また、複合術式や新しい術式等に対する適切な診療報酬を求めることは各学会の役割である。要望によっては当学会だけでなく日本胸部外科学会や日本心臓血管外科学会との共同提案が必要な場合もあろう。なぜなら、まず外保連試案に掲載されないと厚労省への要望には挙がらず、実際の診療報酬改定は困難であるからだ。提案の質・量ともに向上させるため、新たに外科手術分類である外保連手術基幹コード(STEM7)が作成され、診療報酬表Kコード術式の曖昧さを精緻化するための紐付け作業が続いている。こうした状況を鑑み、先天性心疾患治療における診療報酬制度の現状と課題に外保連がどのような取り組みを行っているのか、行いうるのかを概説する。