[III-SY19-06] 小児用薬剤の保険適応外使用の問題点と対策
Keywords:治験促進活動, 小児用薬剤, 適応外使用
【適応外使用の問題点】小児に対する薬剤の約7割を占めるとされる保険適応外使用は,エビデンスに基づかない医療という根本的問題がある.重篤な副作用が生じた際,医薬品副作用被害救済制度の対象外になり,裁判になれば医師の不利になる.診療報酬での査定,薬剤の不安定な供給,小児用製剤の不足なども課題となる.保険適応を得るためには,公知申請あるいは治験を行う必要がある.しかし,小児では製剤の開発や希少な患者の組み入れの労力にもかかわらず,採算性が悪いため治験が停滞している.成人用の製剤を小児に投与することは,有効性・安全性が不明なだけでなく,小児治験の障害にもつながっている.【学会による対策】欧米では,成人の治験の際に小児の治験を義務化する法的規制が設けられている.日本では,このような規制がない代わりに,小児科学会が窓口となり各分科会に治験の支援を依頼する小児医薬品開発ネットワーク支援事業が2017年に開始された.ほぼ同時期に,日本小児循環器学会は独自の治験促進活動を立ち上げた,本システムでは,企業との契約下で対価を得て,プロジェクトチームが治験の段階に応じた支援を行う.開始前は計画の立案,参加施設の調査・選定,実施中は広報,会議の開催,終了後は報告書や論文の作成,製造販売後調査などに協力する.随時,PMDA(医薬品医療機器総合機構)との面談に参加し,臨床現場の意見を伝える.現在までに,抗不整脈薬1,抗凝固薬1,抗心不全薬2,肺血管拡張薬2,降圧薬1,手術関連素材3の計10品目が本活動の対象となった.このうち,5品目は患者の組み入れが終了した.累計の契約金は約1,200万円に達し,学会の学術活動に活用されている.【おわりに】小児循環器領域の適切な医療を進めるためには,薬剤・医療機器の保険適応取得が不可欠である.今後とも,治験促進活動にぜひ御協力いただきたい.