[III-YB07-02] 難治性乳び胸に対するリンパ管静脈吻合術
キーワード:乳び胸, リンパ管静脈吻合術, リンパ流
21世紀に入り、胸管カニュレーションの技術が放射線科を中心に臨床応用され始めると、乳び胸は中枢リンパ管の問題であることが再確認され、治療的介入が試みられるようになってきた。同時期より発展してきたMR Lymphographyや蛍光リンパ管造影法などの画像診断法も、リンパ管疾患の患者特有のリンパ流を高い解像度で描出できるようになり、診断に大きく貢献している。我々の形成外科領域では、四肢リンパ浮腫に対するリンパ管静脈吻合術が一般化し、リンパ管への外科的な治療介入が可能となった。中枢性リンパ管疾患には、外傷にともなう漏出などの順行性の病態と、リンパ流のうっ滞を伴う逆行性の病態がある。これまでの知見からリン特に診断や治療が難しいとされる、逆行性の病態に対する適応の可能性が示唆される。しかし吻合の部位や様式、施行時期など、最適化するべき課題は多い。小児や新生児における乳び疾患では、先天奇形に伴う病態が多彩なことや、リンパ管が一層小さいため、診断・治療により高い技術が要求される。そのため標準的な治療方針の策定は容易ではなく、形成外科によるリンパ管静脈吻合のみではなく、多領域からの治療介入も重要となる。「いのちを繋ぐ」ために、リンパ管をつないでリンパ液を流すという立場から、リンパ外科的アプローチの現在と今後の発展について考察する。