[III-YB09-03] 川崎病の医師主導治験(KAICA trial)の経験と今後の展望
キーワード:医師主導治験, 川崎病, 血管炎
小児の急性血管炎である川崎病は年間約1.5万人が罹患し,20%が治療に難渋し,8%に心臓冠動脈病変を生じる.その克服は道半ばである.我々は2008年にゲノム解析による川崎病の原因究明を通して得た免疫抑制剤シクロスポリンA(CsA)の適応開発を目指し,先行臨床研究を経て2014-16に医師主導治験KAICA trialを行った.その道のりと今後の展望を紹介する. 人種により頻度差がある川崎病はOnouchiらによってホストの遺伝的要因が探索され、ITPKC, CASP3の2遺伝子が川崎病の発症関連遺伝子であることを明らかにされた.両遺伝子は細胞内での炎症活性化に関与するCa-NFAT 経路の調節に関与することも明らかにされた.CsAはこの経路を特異的に抑制するため川崎病治療に有効であることが期待できると考えた.開発されて30年以上経過し、臓器移植後の拒絶反応抑制やネフローゼ症候群に対し小児で長期投与の実績があり,忍容性も良好で点滴が不要な負担の少ない治療になる.しかし,後発品もある現状で企業の新規適応開発は望めなかった.そこで医師主導治験を目指し臨床研究中核病院である千葉大学病院臨床試験部が企業との合意,PMDA対面助言,モニタリングやデータマネジメントを実施した.AMEDによる日本医師会の治験促進事業から研究費を得て,全国22病院で30ヶ月間に目標172例の症例収集を達成した.心エコー中央判定による冠動脈病変抑制効果は有意な結果で安全性も良好なであり2020年に薬事承認された. エビデンスに基づく複数の治療が普及し,川崎病巨大冠動脈瘤の患者数は減少している.しかし未だ年間20名前後が発生しており,免疫抑制療法が次々と提唱される中で患者に最も適した治療選択基準の確立が喫緊の課題である.IVIG不応リスクスコアとは別のCsAの適応基準を見いだすべく次の臨床研究を計画している.