[I-OR03-02] 当院で経験したUnguarded mitral valve orificeの1例
キーワード:Unguarded mitral valve orifice, Mitral valve dysplasia, heterotaxy syndrome
【背景】Unguarded mitral valve orifice(UMO)は、弁輪形成におけるUnderminingの障害により生じるとされ、僧帽弁尖・腱索・乳頭筋の欠如、左室自由壁の重度の菲薄化を特徴とする極めて稀な先天性心疾患である。現在までの文献的報告は僅か9例のみであり、その臨床的特徴や転機についての詳細な報告は少ない。【症例】胎児診断は{I,D,D} DORV, PA, Rt.PPS, Mitral valve dysplasia(Unguarded mitral valve orifice), PDA, ASD(Ⅱ), RAA, heterotaxy syndromeであり、出生後に確定診断とした。在胎37週、出生体重2565g。生後よりPGE1製剤の投与を開始したが、高肺血流のため日齢2よりN2吸入を併用した。日齢8に壊死性腸炎を発症したが保存的加療で軽快し、日齢27にLMBTS+PDA clippingを施行した。術中、輸血によるvolume負荷を行った際に心室頻拍が出現し、ECMO下で帰室した。原因は菲薄化左室の拡張による冠動脈圧排と考えられた。術後3日目にECMO離脱し、その後に不整脈は認められなかった。利尿薬内服のみで術後72日目に退院した。【考察】出生後の心エコーで僧帽弁尖の異形成、弁下構造の欠如および左室壁の菲薄化を認め、UMOと診断した。本症例は術中に心室頻拍を発症したが、ECMO離脱後の経過は良好で、現在生後4か月になるが状態は安定している。今後はBDGおよび左室縫縮術を予定している。過去の報告でもUMOはDiscordant Atrioventricular Connections, DORV, PA (or severe PS)に合併することが多く、本症例と同様であった。9例中4例は死亡、報告時点での生存例は3例であり、長期予後は不良であった。長期的にはsevere MRおよび菲薄化左室に起因する重症心不全、さらには心室性不整脈発症の報告があり、注意が必要である。【結語】UMOは極めて稀な先天性心疾患であり、その臨床的特徴や転機は未だ不明なところが多く症例の蓄積が必要である。