[I-OR06-03] KCNH2遺伝子異常を伴った左室心筋緻密化障害(LVNC)の一例
Keywords:KCNH2, LVNC, 致死性不整脈
【緒言】致死性不整脈や心不全を合併するLVNCはSCN5A遺伝子変異を伴うことが多いと報告されている。KCNH2遺伝子はLQT2の30~55%に変異を伴うとされているが、LVNCとの関連性は報告がない。【症例】15歳男児。13歳時初発の無熱性けいれんの既往あり。けいれん時の心電図や心エコー検査で異常はなし(QTc: 436sec, LVEF: >60%)。脳波異常あり焦点てんかんと診断。抗てんかん薬(レベチラセタム)の内服治療中。学校から徒歩で帰宅途中に校門前で意識消失し転倒。発見時に脈の触知がなく、喘ぎ様呼吸であったため学校職員によるbystander CPRを開始。AEDによる4回の除細動後に洞調律へ回復し当院へ救急搬送。来院時GCS: E1V1M2、HR: 180bpm、RR: 30bpm 、SpO2: 97%(O2投与下)。努力呼吸が強く直ちに気管挿管施行。心肺停止、意識障害の遷延もあり脳保護療法も開始。入院時の血液検査で電解質異常なし。心電図は洞性頻脈でQTcの延長はなし(QTc: 410sec)。心エコーはLVDD: 29mm、LVEF: 67%。心尖部から自由壁にかけてLVNCを疑う肉注形成所見あり(NC/C: 2.3)。AEDの記録から転倒時刻に一致するVFを確認。入院6日後に抜管し、意識状態の改善を確認した。頭部MRI異常所見なし。冠動脈造影CTで異常所見なし。アドレナリン負荷心電図検査を施行、波形の変化やPVCの出現もなくLQT1やLQT2を疑う所見なし(負荷前QTc: 434, 負荷後3分QTc: 446)。β遮断薬とウェアラブルICDを導入し、入院21日目に後遺症なく退院。遺伝子検査で、KCNH2遺伝子のヘテロ接合体のミスセンス変異(c.3095G>A、p.Arg1032Gln)を認めた。発症105日目にS-ICD植え込みを施行、現在まで不整脈なく経過している。【考案】VFの原因として遺伝子検査の結果からLQT2による可能性も考えられるが、入院前後の心電図検査でQTc延長や発症のトリガーになる状況もなかったことからLVNCによるVFの可能性もあり文献的考察も加え検討する。