[I-OR12-03] 学校心臓検診で指摘されたLQT3とBrugada症候群のオーバーラップ家系における遺伝カウンセリングの重要性
キーワード:QT延長症候群, ブルガタ症候群, 遺伝カウンセリング
【はじめに】SCN5Aの異常は3型先天性QT延長症候群(LQT3),Brugada症候群(BrS),洞結節機能不全(SSS),進行性心臓伝導障害, 心房細動などの不整脈を発症することが知られている. 【症例】これまでに失神やけいれんの既往はない6歳男児. 学校心臓検診にてQT延長を指摘され, 3次検診にて当科受診となる. 精査にてQT延長症候群が強く疑われ, 母方の祖父が心イベントをもつBrSとしてICD植え込み術を受けていたことがわかった. その後の遺伝学的検査を含めた遺伝カウンセリングおよび家族検索から, 本児を含めた同胞5人中3人, 母親, 祖父にSCN5A c.5350G>A P.Glu1784Lysの変異を同定した. カウンセリングを繰り返し行い, 小児には運動制限とβ遮断薬の内服を開始し, 母親は循環器内科での経過観察を開始している. さらに母の兄弟, 祖父の兄弟の家系においても, 心イベントを持つ家系が存在することがわかり, 今後, さらに親族家系においても遺伝カウンセリングを継続する予定である. 【考察】SCN5A Glu1784Lys変異は1999年にWeiらが先天性QT延長症候群の変異として報告された後に, 同変異を有する家系において, 高率にBrSや洞機能不全を合併することが報告されている. また, 特に沖縄において同変異が, 高頻度に認められることも報告されている. 【結語】学校心臓検診で指摘されたLQTにおける遺伝カウンセリングは, 発端者にこれまでに心イベントがなく, 運動制限を要する症例もあり, その疾患受容が困難なことも多い. また遺伝型と表現型の関係も複雑であり, 実臨床において悩むことも多い. さらに,親族を含めた家族検索が必要となることもあり, 遺伝カウンセリングの重要性と家族検索も含めた疾患管理, プレシジョンメディシンの重要性について議論したい.