[I-P01-1-03] 心室細動で救急搬送された基礎疾患不明の3ヶ月乳児にICD植込みを行うべきか?
キーワード:VF蘇生後, ICD植込み, 乳幼児
【背景】心室細動(VF)蘇生後症例はICD植込みの適応であり、致死性不整脈の再発予防に努める必要があるが、乳幼児ではICD植込みの手技が確立しておらず、積極的に行うべきか判断に迷うことがある。【症例】症例は3ヶ月の男児。身長59.5cm、体重5.0kg。胎児期より異常の指摘なく、不整脈の家族歴なし。入眠中に突然啼泣し、肩呼吸やチアノーゼが出現。すぐに反応しなくなり、自家用車で近医を受診。心肺停止と判断され、胸骨圧迫されながら当院救急搬送。モニターでVFと判断し、除細動で心拍再開。蘇生後脳症に対して低体温療法開始後、徐脈傾向と共にQT延長所見を認め、β遮断薬投与を開始。しかし、その後経時的にQT時間は正常化し、LQT1-3の遺伝子異常も認めなかった。心室不整脈が目立たず経過した一方で、心房頻拍もしくは心房細動を疑うRR間隔不整の上室不整脈・頻拍発作を繰り返し認め、β遮断薬によるrate controlを継続。その後は現在まで致死性不整脈の再燃なく、外来受診時の心電図も洞調律で経過。幸い脳低体温療法後の神経所見は良好で重篤な神経学的後遺症を残すことなく回復しており、月齢相当の発達を得られている。【考察】本症例は、不整脈に関して基礎疾患の同定に至っていないが、致死性不整脈で発症しており再発に備える必要がある。VF蘇生後症例でICD植込みの適応だが、乳児であり体格による埋め込み方法や成長によるリード不全など、植込みに関する課題も多く現状は薬剤コントロールで経過観察している。本邦で、2歳児(身長79cm、体重9.3kg)に対して皮下に留置した経静脈心内膜用除細動電極リードと腹直筋下のICD本体とで除細動を行う方法でICD植込みを行い良好な経過を得た症例も報告されているが、乳幼児のVF蘇生後症例に対してどの段階からデバイス治療を積極的に行う必要があるのか議論したい。