[I-P01-5-04] 心室中隔欠損肺動脈絞扼術後に判明した肺静脈性肺高血圧に対して脳死両側肺移植術と心室中隔欠損閉鎖術を同時施行した2歳男児例
キーワード:肺移植, 肺高血圧, 肺静脈狭窄
【緒言】近年の肺移植症例数の増加や適応拡大、小児例の増加により、先天性心疾患(CHD)患者の肺移植必要症例が増加してきた。海外では心肺同時移植が主となっているが、本邦での小児の心肺同時移植は未だ症例数が限られる。今回、多発性肺静脈狭窄による肺高血圧(PH)患者の心室中隔欠損(VSD)閉鎖術と脳死両側肺移植術を行った症例を経験した。【症例】症例は2歳 男児。他院で膜様部VSDに対して生後4ヶ月時に肺動脈絞扼術を施行。術後もPHが進行し、トレプロスト持続皮下注射を含めた内科的治療への反応も乏しかった。1歳4ヶ月時に施行した心臓カテーテル検査で多発性肺静脈狭窄を認め、PHに対するこれ以上の内科的治療が困難と判断され、肺移植術目的に当院紹介となった。当院での心臓カテーテル検査では平均肺動脈圧 57 mmHg、肺血管抵抗 11.03 U・m2、肺体血圧比 0.83であった。造影上 肺静脈はいずれも左房移行部付近で区域性狭窄を認め、逆行性に計測可能であった右上下肺静脈と左房の圧格差は各々 28、9mmHgであった。単独でのVSD閉鎖術は困難と判断し、脳死肺移植術とVSD閉鎖術を同時に行う方針となった。2歳10ヶ月時に脳死両側肺移植術とVSD閉鎖術を施行。術後特に問題なく経過し、退院前にPHや肺静脈狭窄がないことを確認し退院となった。【考察】肺移植術とCHD根治術は開胸方法や手術方法が異なり、事前のシミュレーションが必要となる。今回、小児循環器、心臓血管外科、呼吸器外科医師の事前シミュレーションにより円滑に術前、術中術後管理が行えた。本邦において肺移植術とCHD根治術を同時施行した極めて数少ない症例である。【結語】肺条件により根治術困難なCHD症例においても安全に肺移植術とCHD根治術を施行し得ることから、今までの根治術非適応CHD症例に対しても治療介入が可能である。