[I-PAL-05] 先天性心疾患解剖教育のための高解像度三次元アトラスおよび精密心臓模型
キーワード:先天性心疾患解剖, 教育, 三次元アトラス
【緒言】 先天性心疾患診療においてその解剖の理解は重要だが、複雑な三次元構造から成る心臓の解剖を二次元の資料から正確に把握することは困難である。剖検標本は解剖教育に有用であるものの、アクセシビリティや長期保管に課題があり、また診断・治療成績向上や文化的背景の変遷に伴い未修復の先天性心疾患心標本に触れる機会は減少している。結果として医療者が先天性心疾患の三次元解剖を正確かつ詳細に学ぶ機会はほとんどない。我々は、剖検標本をマイクロCTで撮影して高精細三次元データを作製し、これを三次元アトラスおよび模型として公開・頒布することで、こうした課題が解決されうると考えた。【方法】 ボストン小児病院The Cardiac Registryに保管されている剖検心標本を対象とし、これをハーバード大学Center for Nanoscale SystemsにてマイクロCT装置で撮影した。得られたデータを元に作製した三次元モデルをインターネット上に公開し、主要な解剖構造に注釈を付加した。さらに3Dプリンター(Form 3B, Formlabs Inc.)を用いて心標本レプリカを作製し、心内の微細な構造を再現できるか検討した。【結果】 1973-2002年の剖検から得られたワックス浸潤心標本59例(日齢1-52歳)を対象とした。診断は両大血管右室起始症(9例)、房室中隔欠損症(5例)などで、11例が術後(Mustard手術2例など)の標本であった。マイクロCTの解像度は25-119 umで、弁尖や腱索など微細な構造も十分に再現可能であり、さらにオンラインで利用可能なデータサイズまで微細構造を損失せず圧縮可能であった。3Dプリントでもこれらの構造は失われなかった。三次元アトラス: https://sketchfab.com/heartmodels/collections【結論】 剖検心標本のマイクロCTスキャンに基づいて三次元アトラスおよび心標本レプリカを作製した。これらの公開・頒布により、正確な先天性心疾患解剖教育が広く可能になると考えられた。