[I-SY03-05] 小児の心臓突然死ゼロを目指して 小児救急診療医の立場から
Keywords:心突然死, 院外心停止, 心停止後症候群
小児の心突然死に対して,救急・集中治療領域の課題として以下3点を挙げる.心突然死の予防における多分野協働に資するため,これらの課題の知見をまとめ共有する.① 心突然死の前兆症状の抽出小児心突然死例の多くに胸痛・倦怠感・失神などの前兆がある.したがって小児救急の現場では,これらの症状を呈する小児を精査へと繋ぐ役割が求められる.一方で,これらの主訴を呈する小児の多くに器質的異常はなく,良性の経過を辿る.コストと患者へ与える不安を最低限にしつつ,見落としなく診療するストラテジーが求められる.② 市民と医療従事者に対する蘇生教育・普及BLSとAEDの市民への普及は学校での突然死減少に寄与した.特に心原性心停止はbystandar CPRやAEDの使用による予後改善が期待され,蘇生教育についての知識と実践は小児救急医にとって心突然死減少のために欠かせない要素である.③ 院外心停止症例の蘇生・蘇生後管理・原因検索院外心停止小児患者の病着後の蘇生に関するエビデンスも徐々に更新されている.心突然死症例はECMOを用いた蘇生の適応となることも想定されるが,その導入について一定の見解はない.自己心拍が再開した場合,引き続き心停止後症候群 (PCAS) に対する統合的ケアを提供する.呼吸・循環・体温などのPCAS管理方針へ影響を与えうるため原疾患は適切に鑑別されるべきだが,小児院外心停止の原因は多岐に渡り診断に苦慮することも少なくない.また,蘇生できなかった症例においても,原因疾患の特定は近親者の遺伝性疾患の診断と突然死の予防に寄与することが想定される.しかしながら小児では剖検へのハードルが高い上,心突然死の原因疾患は肉眼および組織学的検索では特定できない場合がある.このような場合,遺伝学的検索が有用である可能性があるが,その運用方法は定まっておらず小児救急医にとっての課題の一つである.