第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム3(I-SY03)
小児の心臓突然死ゼロを目指して

2023年7月6日(木) 10:40 〜 12:10 第5会場 (G302)

座長:太田 邦雄(金沢大学医薬保健研究域 医学教育研究センター), 座長:松井 彦郎(東京大学医学部小児科)

[I-SY03-06] 心臓突然死ゼロをめざして~小中高校生心原性院外心停止症例全国調査~ 第1報

岩﨑 秀紀1, 太田 邦雄1,2, 鮎澤 衛3, 檜垣 高史2,4, 犬飼 幸子2,5, 塩野 淳子2,6, 小泉 敬一2,7, 高橋 昌2,8, 三谷 義英2,9, 宮本 智幸2,10 (1.金沢大学 小児科, 2.日本小児循環器学会 蘇生科学教育委員会, 3.日本大学医学部小児科学系小児科学分野, 4.愛媛大学地域小児・周産期学, 5.日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院小児科, 6.茨城県立こども病院小児循環器科, 7.富士吉田市立病院小児科, 8.新潟大学新潟地域医療学講座, 9.三重大学周産母子センター, 10.横須賀市立うわまち病院小児医療センター)

キーワード:院外心停止, 心臓突然死, 学校検診

【背景】2005〜09年の児童生徒の心原性院外心停止(OHCA)全国調査58例の検討では bystanderによる自動体外式除細動器(AED)の使用が神経学的予後改善に繋がるが,その施行率は25%以下と低いため,50〜75%に死亡・重度神経後遺症を残す実態が報告された.一方 未だOHCA登録制度がなく,その後の推移と原疾患・高リスク群・場所・状況、AEDの有用運用(配置・教育)や学校心臓検診の役割に関するデータは乏しい. 【目的と方法】日本小児循環器学会修練施設を対象に、2017〜21年の小中高校生のOHCA発生状況とAEDを用いた蘇生,疾患予後に関して全国調査を行った.【結果】症例24例(中央値11歳,男79%)のうち,目撃者のある蘇生例96%,初期心電図波形が心室細動(VF) は67%,bystanderによる心肺蘇生が施行された例96%,bystanderによる除細動が施行された例84%であった. 学校管理下発症例は50%であり, 社会復帰率(普通学級・支援学級へ復帰)75%,1か月生存率79%であった.学校管理下例では,全ての症例でbystanderによる除細動が施行され(100%),それら全てが社会復帰した(100%). うち運動関連による発症例は67%で,場所は運動場,プール,体育館が67%を占めた. 学校非管理下発症例でも,67%でbystanderによる除細動が施行され,社会復帰率は50%であった.発症前心疾患経過観察例は33%で,平均年齢11.3歳.非経過観察例は67%,平均年齢11.5歳であり, 安静時心電図が正常範囲とされる3疾患(冠動脈奇形,カテコラミン誘発多形性心室頻拍,特発性VF)が33%を占め, 83%が運動関連発症であった.【結語】学校管理中・非管理下のOHCA症例におけるAED使用率の向上および社会復帰率の改善傾向がみられた.症例の集積と学校現場および一般社会への心肺蘇生およびAEDの教育啓蒙普及活動を今後もさらに進める必要がある.