[II-AHAJS-05] 成人先天性心疾患外来における新規心不全治療薬の初期使用経験
Keywords:新規心不全治療薬, アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬, SGLT2阻害薬
[背景] 近年, アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)やSGLT2阻害薬(SGLT2i)を始めとした新規心不全治療薬の有効性が報告されている. 一方で, 成人先天性心疾患(ACHD)の病態は多様であり, その有効性は明確でない. 当院のACHDに対する新規心不全治療薬の初期使用経験について報告する.[方法] 当院外来で新規心不全薬(ARNI, SGLT2i, sGC刺激薬, HCNチャネル阻害薬)を導入したACHD10例を対象とした. 内訳は女性4例, 年齢17~62歳, 二心室血行動態(BV)7例(うち体心室右室4例), 単心室血行動態(UV)3例(主心室左室1例, 主心室右室2例).導入前後の身体所見と検査データを後方視的に検討した.[結果] ARNIを導入したのが7例(BV5例, UV2例), SGLT2iを導入したのが5例(BV4例, UV1例), sGC刺激薬の導入が2例(BV1例, UV1例), HCNチャネル阻害薬の導入が2例(BV2例)であった. ARNIとSGLT2iの2剤導入したのが3例(BV3例)であった. 10例中, 8例でβ遮断薬, 2例でMRAが併用されていた. ARNIを導入した7例中, 2例で10mmHg以上, 1例で20mmHg以上の収縮期血圧の低下を認めた. うち2例でふらつきを認め, 減量した. 200mgまで増量しえた2例は, いずれもARNI単独投与であった. 5例で心エコーにてEFの改善や房室弁逆流の改善を認めた. ARNI導入前後で心臓MRI検査をフォローした1例では, 房室弁逆流率26%から9%に改善を認めた. sGC刺激薬を使用した2例で, 収縮期血圧10mmHg以上の低下を認めた症例はいなかった. SGLT2iを導入した5例中, 3例で5%以上の体重減少があり, うち2例は各々18%, 28%と大幅な体重減少を認めた. 2例で臨床的に浮腫の改善を認め, 2例で利尿薬の減量が可能であった. HCNチャネル阻害薬を導入した2例では, それぞれ23%, 13%徐拍化した. [結語] 新規心不全治療薬は単心室を含むACHD患者においても一定の効果を認める場合があるが, 予後改善効果に関しては症例の蓄積が必要である. ARNIでは忍容性に課題が残る.