[II-AHAJS-04] 重症心不全を伴う若年成人先天性心疾患患者のQOL向上を目指したSGLT2阻害薬(タバクロフロジン)投与
Keywords:SGLT2阻害薬, 成人先天性心疾患, 心不全
【背景と目的】最近,SGLT2阻害薬が心不全治療薬として積極的に投与されているが,先天性心疾患患者への使用報告は乏しい.ダパグリフロジン(DAP)を投与された,重症心不全を伴う若年成人先天性心疾患の自験4例を通じて注意点を検討する.【対象と方法】年齢16~23歳.failed Fontan 3例(HLHS:1例,Asplenia,SRV,PS,TAPVC:2例),Rastelli術後1例(22q11.2欠失症候群,PA/VSD,MAPCAs).重症心不全と低酸素血症を合併し,酸素吸入療法を行っていた.利尿薬(3例はMRAも使用),カルベジロール(3例),ピモベンダン(2例)のほか,肺血管拡張薬(3例),抗不整脈薬(1例)が投与されていたが,心不全の悪化による入院加療や頻回のアルブミン補充療法をくり返していた.DAP投与後の経過を診療録から後方視的に検討した.【結果】DAPは0.02~0.13mg/kg/日で投与開始された.1例はeGFR 32 mL/min/1.73m2で投与開始後腎不全が悪化し2日で中止,4日間の血液透析を要した.eGFR 32 mL/min/1.73m2に回復し退院後,1か月で心不全が悪化し死亡した.1例はNT-pro BNP 3732 pg/mL,体心室駆出分画<10%と著しく低下しており,投与後利尿が促進し浮腫が軽減,心移植適応評価で転院したが心不全が悪化し死亡した.他の2例は低アルブミン血症が改善し補充不要となり,0.13および0.15 mg/kg/日で継続し1年が経過する.【考察と結論】DAP投与後早期にeGFR低下をきたし腎機能障害が悪化することがある.中止した1例はDAP投与による腎潅流の減少が腎不全悪化を招いたと考えられ,1例は利尿が促進したものの予後は改善しなかった.Failed Fontanで高度なうっ血,腎不全に陥っている場合,DAP導入には注意が必要である.一方で比較的心不全・腎機能低下が軽度な2例では低アルブミン血症が改善しQOLが向上した.先天性心疾患症例においても,より早期の積極的なSGLT2阻害薬導入が心不全/QOLの改善につながる可能性がある.