[II-AHAJS-06] 成人先天性心疾患の心不全に対する多剤併用療法の試み
Keywords:成人先天性心疾患, 心不全, 薬物治療
背景)心不全治療薬であるSGLT2阻害薬(SGLT2i)やアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)を含む多剤併用療法の成人先天性心疾患(ACHD)に対する効果は明らかではない。(方法)複雑ACHDの心不全ですでにβ遮断薬、ACE阻害薬/ARB、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を内服している症例に対し、(1)まずSGLT2iを導入した後、(2)続いてACE阻害薬/ARBをARNIに変更した。薬剤導入前後での血液検査、エコー指標、運動耐容能の推移を観察した。(結果)計27例のACHD症例(女性12例、中央値年齢34.3歳)を登録した。Systemic LV(SLV)は14例、systemic RV(SRV)は8例、Fontan循環(FC)は5例であった。SGLT2iは23例(SLV 12例、SRV 7例、FC 4例)で導入できた。SGLT2i導入により、SLV群ではBNPの低下を認めた(69.8 [38.6-151.2] vs. 44.7 [17.6-90.5] pg/mL, P = 0.0186)。SRV群では検査所見の改善を認めず、FC群では体心室サイズの縮小を認めた(拡張末期面積 40.3 ± 6.8 vs. 31.3 ± 4.2 cm2, P = 0.0286)。引き続きのARNIは11例(SLV 9例、SRV 2例、FC 0例)で導入できた。4剤併用療法で、SLV群では血圧、BNP、左室径が低下した(115 ± 14 vs. 100 ± 13 mmHg; 55.5 [37.0-180.8] vs. 38.8 [19.0-75.5] pg/mL; 50.1 ± 6.6 vs. 44.0 ± 5.7 mm: all P < 0.05)。2例のSRV群ではBNPと体心室サイズの縮小傾向を認めた。いずれの群でも運動耐容能の有意な変化は認めなかった。(結論)ACHDの心不全での多剤併用療法の導入は必ずしも容易ではない。しかし、特に体心室左室の症例ではBNP等の改善を認め、効果が期待される。