[II-OR15-04] 補助人工心臓植込み後の管理に難渋した1例
キーワード:心臓移植, 補助人工心臓, 管理
【背景】2010年以降、補助人工心臓(VAD)の普及は急速に進んでいるが、本邦ではドナー不足が深刻であり移植待機期間は長期となるためVAD植込み後の管理は重要である。【症例】16歳、男児。13歳時に拡張型心筋症と診断され心臓移植適応となりVAD植込み術を実施し、回転数2700bpmで流量3.0~4.0L/minで管理開始した。術後3ヵ月、心室頻拍(VT、760回/日)、低流量アラーム(40回/日)を頻回に認めるようになりアミオダロン(AMD、200mg/日)を開始したが改善なかった。脱血管と心室壁の接触のためと思われるVTにより低流量となっていると判断しVAD再固定術を実施した。一時的に軽快したが再増悪したため脱血管が心室壁に吸いつく(サッキング)を考慮して回転数を2700→2500bpm、流量3.0L/minに減少させ低流量アラームは減少した。VT50~70回/日、低流量アラーム5回/日は持続したが自宅管理可能と判断し、飲水多く取るよう指導(2500ml/日以上)を行いAMD(200mg/日)は継続とした。術後2年9ヵ月、AMD関連甲状腺中毒症(AIT)を発症しAMD中止、ステロイド療法を開始した。AIT発症後より急激な体重減少(73kg→55kg)、左室機能の改善(左室拡張末期径75→53mm、左室収縮率23→40%)認め、高心拍出の状態(心拍出量9.1L/min)であったため回転数を2500→2160bpm、流量1.8L/minに下げた。術後3年4ヵ月、失神を認め回転数を下げ過ぎたことによる脳虚血と判断し回転数を2160→2500bpm、流量3.0L/minに戻した。術後3年5ヵ月、低心拍出症状を認め中心静脈圧0mmHgから重度の脱水と判断し急速輸液を開始し症状改善見られたが、数日後に脳梗塞(左上下肢麻痺、構音障害)を発症した。【結語】VAD植込み後のVTは送血管の接触、サッキングも原因として鑑別に挙げる必要がある。脱水は低心拍出、脳梗塞の発生を高める可能性があり注意する必要がある。移植待機期間が長い程VAD関連合併症は起こる可能性は高くなる。