[II-OR19-01] 左室心筋緻密化障害の臨床像における長期予後
Keywords:左室心筋緻密化障害, 遺伝学的背景を含めたphenotype, 長期予後
【背景】左室心筋緻密化障害(LVNC)の臨床像は無症状から致死的な例まで多彩な症状を呈する遺伝的要素の強い疾患である。 【目的】遺伝学的背景を含めたphenotypeにおけるLVNC症例の予後を明らかにすること。【対象と方法】当院で遺伝学的検査を行ったLVNC 232例(男122例、女110例)を対象とし、初診時のphenotypeで6群(DCM type LVNC, HCM type LVNC, RCM type LVNC, CHD type LVNC , Arrhythmia type LVNC, Isolated type LVNC)に分類し、予後調査を行い比較検討した。【結果】DCM type LVNC (n=85, 36.6%), HCM type LVNC (n=4, 1.7%), RCM type LVNC (n=9, 3.8%), CHD type LVNC (n=51, 21.9%), Arrhythmia type LVNC (n=31, 13.3%), Isolated type LVNC (n=52, 22.4%)であり、遺伝学的検査にて全体の42.2%(n=98)に遺伝子変異を認めた。予後調査(平均観察期間5年)において、心血管イベント(心臓移植、補助人工心臓植込、死亡、塞栓症)を全体の21.9%(n=23)に認め、DCM type LVNC (p=0.043, リスク比=2.28, オッズ比=3.56)、RCM type LVNC(p=0.004, リスク比=3.04, オッズ比=7.13)は他の群と比較して有意に高値であり、遺伝子変異の症例(n=17(68%), p=0.00001, リスク比=3.37, オッズ比=10.10)もリスク要因であった。さらに多変量解析にてTAZ遺伝子変異を認めるDCM type LVNC(DCM・TAZ群)(p=0.002, リスク比=4.56)とTNNI3遺伝子変異を認めるRCM type LVNC(RCM・TNNI3群) (p=0.0001, リスク比=4.56)はハイリスクであり、臨床的特徴としてDCM・TAZ群の発症年齢は4か月(中央値)と低年齢で発症し経過中に心血管イベント(中央値10か月)を全例に認め、RCM・TNNI3群の発症年齢は7歳(中央値)であったが診断から早期(中央値4か月)に全例で心血管イベントを認めた。【結語】DCM・TAZ群は低年齢で発症し、RCM・TNNI3群は診断からの進行が非常に早く、両群とも全例で心血管イベントを認め予後不良であった。