[II-OR24-01] 当院における生体弁による肺動脈弁置換の治療経過について
キーワード:肺動脈弁置換, 生体弁, 弁耐久性
【緒言】成人先天性心疾患の増加に伴い、根治術(ICR)後の肺動脈弁置換(PVR)を行う症例が増えている。今回、当院での生体弁PVRの治療経過および弁耐久性について検討した。【対象・方法】対象は、2006年以降にP弁位に生体弁置換(導管内生体弁を含む)を行った32例33件(男18)。原疾患は、TF:25、DORV:3、critical PS:1、AVSD PS:1、TGA:1、ASR(Ross手術施行):1例。診療録を元に治療経過を調べ、弁耐久性については、P弁通過血流最大流速3.5m/s以上のPSまたはⅡ度以上のPRを弁機能不全とし、再手術およびカテーテル治療による弁再介入のイベントに対して、Kaplan-Meier法を用いてイベント回避率の時間解析を行った。【結果】PVRの適応は、PR:21、PS:7、IE:2、APF:1、ASR:1、LVOTO:1件。使用弁は、ブタ大動脈弁:8(3件は導管内)、ウシ心嚢膜弁:25件。サイズは21mm:2、23mm:5、25mm:15、27mm:9件。PVR時年齢は35.7歳(10.1~61.6)、PVR後の観察期間は7.1年(0.1~16.3)、手術死亡なし、遠隔期に術前から低心機能であった1例を心不全で失った。PVR前後でのNYHAは、Ⅰ度:12、Ⅱ度:19例が、全例Ⅰ度へ改善した。PR例では、PVR前後でRVEDVI、BNPの有意な低下を認めたが、LVEF、RVEFに変化はなかった。PVR後のイベント回避率は、3年:96.9%、5年および10年:87.6%で、4/33件(12.1%)に弁再介入を要した。再手術が2例で、1例は術後5年でのIEに対して再PVR、1例は10歳時のPVR後6年での石灰化によるPS進行に対して弁付きパッチを用いた右室流出路再建を行った。PS進行に対するカテーテル治療が2例で、1例は29歳時のPVR後13年、1例は12歳時のPVR後10ヶ月で弁再介入に至った。【結論】生体弁PVRの治療経過は、症状改善と容量負荷軽減の点で概ね良好であった。術後10年時では高い再介入回避率を得ているが、小児期のPVRは早期弁劣化を来たす可能性があり、手術時年齢を考慮し、将来的な経皮的弁置換の選択も見据えた治療計画が必要である。