[II-OR24-03] 当院におけるRoss手術後の自己肺動脈弁の術後閉鎖不全についての検討
キーワード:Ross手術, 自己肺動脈弁, 大動脈弁閉鎖不全
【目的】Ross手術は,人工弁の使用に比し,冠動脈の移植が必要となるが,小さい大動脈弁においても可能で,移植後の弁の成長や,抗凝固においても有用となりうる.当院での術後1年,5年および遠隔期の自己肺動脈弁の閉鎖不全(大動脈弁閉鎖不全)および,合併症について検討する.【対象】1996年12月から2020年7月までに当院でRoss手術を施行した43例(男性29例,女性14例)を対象とした.術前診断はAS 22例,AR 7例(内,PTAV後1例),ASR 12例(内,PTAV後6例)で,合併症としてCoA 10例.【術式】全例,自己肺動脈弁による大動脈基部置換を施行し,加えて弁輪拡大手術(Konno手術)を5例に施行.【結果】死亡例はなし.手術時年齢は日齢10~25歳(平均5歳10か月,中央値2歳4か月),術前のPRはnoneが19例,trivialが24例であった.術後のARは,術後1年ではnoneが13例,trivialが21例,mildが8例, 不明1例であった.術後5年経過時点での39症例中ではnoneが6例,trivialが18例 mildが8例,moderateが3例,severeが1例,不明が2例であった. 術後10年以上経過している23症例ではnoneが3例,trivialが9例,mildが5例,moderateが6であった.大動脈弁置換術を5例(11.6%,Ross手術後6年-20年)に施行した.その他の合併症として,感染性心内膜炎は4例(9.3%),心筋梗塞が3例(7.0%)であった.【考察】自己肺動脈弁置換後のARについては,術後1年までで出現または進行を認めた例は43例中17例(39.5 %),1年後~5年後で36例中14例(38.9%)であった.術後5年まででは計23例(53.4%)が出現または進行を認めた.10年以上経過し,5年後以降に進行を認めた症例は23例中7例(30.4%)であった.感染性心内膜炎については既報より多かった.大動脈弁閉鎖不全は5年以内に5割が程度の差はあれ進行するものの,弁置換を要する症例は1割程度であった.以後割合は減るがAR進行を認めることがあり継続的な加療が必要と考えられた.