[II-P05-3-03] 当院における小児期発症の肺動脈性肺高血圧症の中・長期予後
キーワード:肺動脈性肺高血圧症, 小児, 中長期予後
【背景】近年の肺血管拡張薬の進歩により、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の予後は改善しているが、小児期発症PAHにおける中長期予後に関する知見は乏しい。【方法】2010年1月から2022年12月までに15歳未満で診断されたPAHのうち、有意な左右シャントを有する症例を除き、当院に通院歴があり治療開始後5年以上経過した小児例について、心血管イベントの有無と中長期的な血行動態について後方視的に検討した。【結果】対象は遺伝性肺動脈性肺高血圧症3例、特発性肺動脈性肺高血圧症4例、門脈肺高血圧症(PoPH)1例の計8例だった。診断時年齢中央値9.6(6.2〜13.7) 歳、追跡期間中央値9.1(5.1〜12.4) 年だった。期間中の死亡や失神はなかったが、喀血での入院例を1例認めた(PoPH症例、12歳時)。診断時の平均肺動脈圧(MPAP)中央値は60(29〜98) mmHgで, 肺血管抵抗係数(PVRi)中央値は18.6(7.2〜48.9) wood Unit・m2(以下、U・m2)だった。治療開始5年後のMPAP中央値は35(23〜64) mmHg、PVRi中央値は6.0(3.5〜9.1) U・m2で、全例が3剤以上の肺血管拡張薬を併用しており、このうち6例で皮下/静脈内プロスタサイクリン製剤を使用していた。治療開始後8年以上経過していたのは5例で、直近の心臓カテーテル検査でのMPAP中央値は54(25〜70) mmHg、PVRi中央値は13.5(6.2〜17.5) U・m2だった。治療開始後5年時からの変化率(中央値)は、MPAP+15.6(-21.9〜+42.1) %、PVRi+48.4(+16.7〜+110) %だった。5年時と比べると改善していた1例も3年前と比較すると増悪していた。【結語】PAHの中長期追跡例では心血管イベントは少なかったが、最終的に全例で肺高血圧の進行を認めた。現行治療での限界があり、新規治療法の開発が望まれる。