[II-P06-2-08] 鎖骨下動脈フラップ法による大動脈再建後の弓部形態変化 弓部低形成を有する症例について
Keywords:大動脈縮窄症, 複雑心奇形, 鎖骨下動脈フラップ手術
【はじめに】大動脈縮窄症(CoA)に対する鎖骨下動脈フラップ法(SFA)は、長い病変に可能、全周性縫合を回避可能などメリットがある一方、中枢側拡大は得られず、弓部低形成を有するCoA例へのSFAの適応が議論される。【目的】CoA複合例に対し初回手術にSFAによるarch repairと肺動脈絞扼(PAB)を施行した症例の大動脈弓部の術後形態変化を調べる。【方法】2010年1月以降にCoA複合に対しSFA+PABを施行した25例中、心内異常がVSDの20例(C群)を対象とした。同時期に行った単独PABの15例(N群)を成長の比較対象とした。大動脈計測を初回手術の前後と心内修復前に行った。弓部血管径(A径)は鎖骨下動脈の直前で計測した。【結果】初回手術時体重(kg)はC群 vs N群=2.9±0.6 vs 3.2±0.8 (NS). 心内修復前の計測時月齢は12.9±7.8 vs 15.0±4.6 (NS). A径(mm)は各々の観察点でC群 : 3.7±0.8 → 4.6±0.9 → 6.7±1.2: P < 0.01, N群: 5.5±1.2 → 5.9±1.3 → 7.7±1.3: P < 0.01と両群とも経時的に拡大を認めた。群間比ではC群で低値(P < 0.01)であった。さらにA径と下行大動脈径の比(%)では、C群:60.0±16.0 → 80.0±13.7 → 85.0±9.0:P < 00.1 と拡大を認めた。N群:100.9±24.6 → 108.5±21.3 → 105.4±20.3:NS. 群間比はいずれもN群より有意に低値であったが、徐々に両群間の差は減少した。さらにC群においてA径と上行大動脈径の比を測定した(37~67%)。このうち50%未満の高度低形成(L群:9例)と50%以上(H群:11例)を比較した。A径(mm)はL群:3.1±0.5 → 4.1±0.8 → 6.5±1.1: P < 0.01, H群:4.1±0.8 → 5.0±0.8 → 6.5±1.5: P < 0.01と両群とも有意な成長を認め、心内修復前に群間の差は消失した。【まとめ】弓部低形成例においてもSFA後に弓部成長が得られた。今回の検討で弓部血管径と上行大動脈径比の最低値は37%であった。より低形成症例への適応にはさらなる検討が必要である。