[II-P06-3-06] 川崎病急性期におけるの血小板活性化因子の動態
キーワード:血小板活性化因子, PAF-AH, HDLコレステロール
【背景】血小板活性化因子(Platelet-activating factor; PAF)は炎症性メディエーターとして働く生理活性物質である。これを分解するPAF-acetylhydrolase(PAF-AH)は血漿リポ蛋白質と複合体を形成しており、脂質代謝異常や動脈硬化性疾患、炎症性疾患で高値を示すことが報告されているが、川崎病患者におけるPAF-AHの動態や治療中の変化など詳細な検討はなされていない。【目的】PAF-AHと川崎病治療反応性や臨床経過との関連を検討すること。【方法】対象は急性期治療を受けた川崎病患者14例(年齢の中央値1歳7ヶ月[7ヶ月-9歳3ヶ月]、男児6例)。初回治療はIVIG 2g/kg + ASA 30mg/kgとし、2nd lineはIVIG 2g/kg追加、3rd lineはシクロスポリン持続静注療法を施行した。血清PAF-AH活性を初期治療の開始前、2日後、7日後、30日後で測定した。IVIG治療反応性により群分けし、PAF-AHと臨床データ、予後を比較検討した。【結果】初期治療反応群、不応群ともに7例で、両群間での年齢、性別に差はなかった。不応群のうち4例で2nd lineまで、3例で3rd lineまで要したが、両群とも冠動脈病変を残した症例はなかった。不応群では治療開始前の白血球数、CRPは高値、アルブミン、ナトリウムは低値を示した。一方で、治療開始前のPAF-AHは両群ともに高値を示した(0.026±0.004 vs 0.025±0.003μmol/min/mL)。PAF-AHの経時的変化に関しては2日後より低下を示すが、不応群では7日後での低下を認めなかった(0.015±0.003 vs 0.019±0.001μmol/min/mL)。30日後の時点で両群ともにPAF-AHの値は低値となっていた。この挙動は7日後の回復が不応群で遅れるHDLコレステロールと類似していた。【考察】PAF-AHは初期治療不応群での低下に時間を要し、川崎病の治療反応性を反映している可能性が考えられた。本検討結果は川崎病の病態へのPAFの関与とともにPAF-AHのバイオマーカーとしての有用性も示唆する。