[II-P06-4-01] TCPC術後遠隔期に血栓による心外導管狭窄をきたした1例
キーワード:TCPC術後, 抗凝固療法, 血栓症
TCPC術後合併症の一つとして血栓塞栓症が挙がる。中でも、血栓による心外導管狭窄は合併症の一つであるが、その報告は少ない。今回、術後遠隔期に導管狭窄をきたし、外科治療を要した1例を経験したため報告する。症例は11歳女児。Critical PS, TS, hypo RV, ASD(II), sinusoidal communicationの診断で、3歳時にTCPCを施行した。術後はアスピリンを内服していた。中学校進学前の精査目的に入院した。入院時SpO2は 94%(室内気)であり、心雑音聴取されず、胸部レントゲンと心電図に異常なく、血液検査では血小板減少とPT-INRの延長を認めた。心臓カテーテル検査では、IVC mean 18 mmHg、心外導管からIVCの圧差が5mmHg、造影で心外導管内に最大径20mmの結節影があり高度狭窄を認めた。造影CTでも同様の所見が確認され、入院10日目に導管置換術を施行した。導管内には石灰化した陳旧性血栓を認めた。術後1日目からワーファリン、アスピリンの内服を行った。術後8日目の造影CTで狭窄は認めず、以後4ヶ月にわたり良好に経過している。本症例ではTCPC術後2年目以降、血小板が低値で経過していた。術後3年のカテーテル検査を見返すと、今回の血栓部位と一致して僅かに造影不良をきたす領域があり、この時点ですでに血栓があった可能性は高い。TCPC術後の持続する血小板減少では導管内血栓も鑑別に挙がると考えられた。また、本症例ではアスピリン単剤で管理しており、ワーファリンや他の抗凝固療法を追加することで導管内狭窄を回避できた可能性はある。TCPC術後におけるワーファリン長期投与について未だ賛否両論あるが、本症例からはワーファリンを用いた抗凝固療法が望ましいと考えられる。