[II-P07-3-05] 単心室治療症例に対するリピオドール®の使用:いかに副作用を軽減し,リスクとベネフィットのバランスを適正化するか
キーワード:リピオドールリンパ管造影, フォンタン手術, リンパ漏
【背景】リピオドール®は,X線透視下の中枢リンパ管評価を可能とするだけでなく,その塞栓性から乳糜漏出をはじめとするリンパ漏出性疾患の塞栓治療にも利用される.そのため,右左短絡を有する症例に本剤を使用する場合には,脳リピオドール®塞栓をはじめ体循環塞栓のリスクが生ずるため,禁忌とする意見がある.しかしながら,リンパ漏出性疾患は,先天性心疾患症例,とりわけ単心室治療症例では比較的多く経験される.【目的】リンパ漏出性疾患に罹患した右左短絡を有する症例における,リピオドール®使用の危険性と恩恵について検討すること.【対象と方法】2018年12月から2022年11月までの4年間に当院でリピオドール®造影を施行した単心室治療群6症例(年齢:7.2±7.1歳)を対象とし,原疾患とリピオドール®造影(適応・造影剤使用量・透視時間・効果・副作用・転帰)について院内データベースまたは診療録より抽出し比較検討した.【結果】基礎疾患は左心低形成症候群4例(Norwood術後2例,Fontan術後2例),右室型単心室1例(Fontan術後1例),三尖弁閉鎖1例(Fontan術後1例)であった.適応疾患は乳糜胸3例,乳糜腹水1例,乳糜胸腹水1例,肺門部リンパ管異常1例であった.造影剤使用量は0.22±0.05ml/kgであった.効果としては診断補助2例,胸管塞栓/破砕補助2例,塞栓2例であった.副作用は2例に起こり,脳塞栓1例,全身浮腫1例であった.転帰は検査上の異常がなく経過観察1例,追加のリンパ管治療による改善1例,胸管塞栓/破砕による改善2例,死亡1例であった.【結語】リピオドール®造影は,右左短絡を有する症例であってもリンパ漏出性疾患に対し診断的価値と治療的価値の両者をもたらしうる.一方で,体循環の塞栓や病状の悪化等をもたらしうるため,投与量や方法の工夫とリンパ管画像診断を組み合わせることによる慎重な評価が望ましい.