[II-P07-4-03] 総肺静脈還流異常症術後に繰り返す肺静脈狭窄症に対するシロリムス全身投与の経験
Keywords:難治性肺静脈狭窄, 肺動脈性肺高血圧, 総肺静脈還流異常症
【背景】総肺静脈還流異常症(TAPVC)の修復術後に生じる肺静脈狭窄は、しばしば進行性で治療抵抗性であり、難治性肺静脈狭窄症を呈し、致死的な経過をたどり予後不良である。今回、我々はTAPVC術後に難治性肺静脈狭窄および重症肺高血圧症を来した症例に対してシロリムス全身投与を行った症例を経験したので報告する。【症例】在胎35週1日に体重2646gで出生。出生後にTAPVC(上心臓型)と診断。待機的に日齢13にTAPVC修復術施行。術後に肺静脈狭窄を繰り返し、sutureless repair法を含めた2回の再手術を経て、生後4か月時に開胸・人工心肺下に右上・左下肺静脈にステント留置(7mm)を行った。この時点で他の2本の肺静脈閉塞を認めた。その後も症状を伴う肺静脈狭窄を繰り返したため、1ヶ月毎にステント内狭窄に対する、経皮的バルーン拡大術を要した。生後10ヶ月時に当院病院倫理委員会の承認を得てシロリムス内服を開始した。内服開始前の心臓カテーテル検査ではPAp :72/43(56)mmHg、Pp/Ps:1.1、PVRi:9.7WU*m2、TPG(mPAp-mPVp):37mmHgと肺動脈性肺高血圧(PAH)の進行も認めた。現在、内服後4か月が経過し、肺静脈狭窄の再発は繰り返しているが、症状が出現し再拡大術を要するまでの期間がやや延長した。さらに、投与後のカテーテル検査ではPAp:40/18(28)mmHg、Pp/Ps:0.56、PVRi:4.4WU*m2、TPG:12mmHgとPAHの改善を認めた。【考察】シロリムスはmammalian target of rapamycin (mTOR)を阻害する薬剤で、細胞増殖を抑制し狭窄病変に対して効果を発揮する。本症例での経験より、肺静脈狭窄だけでなく、PAHへの効果も期待できるが、投与後短期間であり、引き続き、その効果と副作用を慎重にフォローする必要がある。