[II-P07-4-02] 当院における肺血管拡張療法中フォンタン循環患者の臨床的特徴に関する検討
Keywords:肺血管拡張薬, フォンタン循環, 血行動態
【背景】フォンタン循環において肺血管抵抗は肺血流を調節し、すなわち体循環の前負荷、心拍出量と直結するため、肺血管拡張薬(PVD)による治療は期待されているが、その効果や適応についてまだ一定な見解はない。【目的】当院における肺血管拡張療法中フォンタン循環患者の臨床的特徴を検討する。【方法】2021年8月1日から2022年7月31日の期間中に当院に通院歴があり、フォンタン手術後1年以上経過した患者を対象とした。PVD導入中の群(PVD群)とそうでない群(非PVD群)に分け、患者背景、血行動態指標などを診療録より抽出し、その特徴を後方視的に比較検討した。【結果】症例は48例(PVD群 25、非PVD群23)。PVD群のうちPVD1剤使用18例(72%)、2剤併用7例(28%)、うちERAは全例(100%)、PDE3阻害薬は8例(32%)で使用された。PVD導入時期はフォンタン前 20例(80%)、フォンタン後 5例(20%)、投与期間の中央値は7年0か月であった。両群(PVD / 非PVD群)の年齢中央値は9 / 15歳とPVD群がより低年齢であった。HLHS 9(36%) / 5(22%) 例、Heterotaxy synd. 6 / 5例、fenestration 12(48%) / 3(13%) 例、PLE合併 3 / 0例であった。臨床指標ではSpO2 93 / 94%、NYHA class I-7; II-15; III-2 / I-12; II-11; III-0、6MWD 408 / 418m、BNP 24.3 / 12.8ng/mL、mean PAP 11.0 / 9.6 (p < .05) であった。他の治療はHOT 64 / 17%、ACE-I 92 / 70%、MRA 64 / 13%、β遮断薬 34 / 17%、利尿薬 34 / 4%といずれもPVD群で多く使用されていた。【考察】PVD群は非PVD群と比較して血行動態が不良で、HOTや他の併用薬を含めより濃厚な管理が行われている。言い換えればPVDを組み合わせた管理によりフォンタン循環が維持された患者が存在すると思われる。PVDはフォンタン循環において有益である可能性がある一方、その適応や導入時期、さらに中止基準など不明な点が多く、さらなる検討が必要である。