[II-P08-4-04] 右肺動脈上行大動脈起始症に対する二期的修復
キーワード:右肺動脈上行大動脈起始症, 肺高血圧, 二期的修復
【背景】右肺動脈上行大動脈起始症(AORPA)は稀な先天性心疾患であり無治療では死亡率が高く、診断後早期に修復術を行うことが基本である。しかし、ハイリスク症例に関しては右肺動脈絞扼術を先行させ二期的に修復術を選択することがある。【症例】月齢1の女児。RSウイルス細気管支炎を契機にAORPAと診断され、当院へ紹介された。多呼吸・陥没呼吸が著明であり哺乳不良も認めた。心エコーでは右肺動脈圧と大動脈圧がほぼ等圧、左肺動脈圧は大動脈圧以上の肺高血圧(PH)を認めた。RSウイルス罹患後であり人工心肺はハイリスクと考えて二期的修復を選択し、右肺動脈絞扼術を施行した。術後、右肺のPHは改善傾向であったが左肺のPHの改善に乏しく、肺血管拡張薬(タダラフィル、アンブリセンタン)と酸素投与を継続したが、心不全が増悪したことから右肺動脈絞扼術後42日で右肺動脈再建術を施行した。術後はタダラフィル内服と酸素投与でPH治療を行った。心臓カテーテル検査では酸素投与下で軽度のPHを認めるのみであり、酸素投与と肺血管拡張薬を継続する方針として退院した。【考察】本症例における左肺高血圧はoversystemicとなっており、highflow PH以外の機序も関与していると推測された。本症例では拡大した心臓により生じた左無気肺がPHを増悪させていた可能性が高く、術前に陽圧換気で左肺の状態を改善させることで周術期のPH crisisのリスクを下げるよう試みた。術後は心拡大が改善したことで左肺の含気も改善傾向となった。【結語】AORPAは高度の肺高血圧を伴うことが多く、高肺血流以外の要因が関与している可能性が示唆される。ハイリスク症例には二期的修復も選択肢となるが、その後の慎重な経過観察が重要である。