[II-PSY3-02] 小児心疾患患者の集中治療室における終末期医療の実態 -単施設における後方視的探索研究-
キーワード:重症心疾患, 集中治療室, 終末期医療
【背景・目的】小児重症心疾患の治療成績は向上しているが、救えない命が一定数存在する。救えない命だからこそ、その尊厳を重視した質の高い終末期(End-of-life : EOL)医療の提供が必要である。そこで自施設の死亡症例からEOL医療の内容および家族の受け入れを振り返り、課題について考えたい。【方法】2016年1月から2022年12月に、静岡県立こども病院の集中治療室にて死亡した心疾患患者を抽出した。患者情報・病状説明内容・EOLの診療行為(蘇生行為、治療撤収)を検証した。“死亡1週間前の状態”から死亡が予測し得たかを複数の循環器集中治療医で客観的に検討した。「救命困難」という病状説明後の家族の発言から、EOLの受け入れが十分かどうかを検証した。“EOL受け入れ十分”とは「十分頑張った」などという発言があった症例、 “EOL受け入れ不十分”とは「奇跡を信じる」などという発言あった症例と定義した。【結果】対象期間に51名の患者が死亡。男性が27名。死亡時日齢(中央値)は209日(11-6632日)。主診断は先天性心疾患が47名、心筋疾患が2名、不整脈が1名、肺高血圧が1名。45名(88%)は“死亡1週間前の状態から予想され得る死亡”であった。EOLに蘇生行為が実施されたのは8名(16%)。EOLに行われた治療撤収は、不要デバイス除去が32名(63%)、輸液減量・中止が36名(71%)。「救命困難」という病状説明〜死亡まで2日以内の症例では“EOL受け入れ十分”が14名(67%)、“EOL受け入れ不十分”が8名(36%);3日以上の症例では“EOL受け入れ十分”が26名(90%)、“EOL受け入れ不十分”が4名(13%)。【結語】集中治療室における死亡症例の多くは、1週間前にはその死が予想されていた。救命困難との判断後、早期にその旨の説明を行うことで、家族の受け入れが良好になる可能性がある。しかし、「救命困難」の病状説明が死の直前であることが多く、その判断の難しさがEOL医療における課題として考えられた。