第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長要望ワークショップ

会長要望ワークショップ(II-PWS2)
すべての職種に役立つ患者・保護者との関わり方:病棟保育士の視点、急性期・慢性期看護の葛藤、リエゾンチームの役割など

2023年7月7日(金) 14:50 〜 16:20 第5会場 (G302)

座長:飯島 哲子(埼玉医科大学国際医療センター), 座長:菊地 祐子(神奈川県立精神医療センター)

[II-PWS2-01] 自閉スペクトラム症を伴う重症心筋症児に対する心臓移植へ向けた取り組み

下舘 忍1, 池田 祐子1, 大橋 陽子1,2, 森 千春3, 加藤 麻理4, 小林 佳代子4, 木村 瞳5, 野村 羊示5, 安田 和志5 (1.あいち小児保健医療総合センター 診療支援部 チャイルドライフ担当(保育士・HPS), 2.あいち小児保健医療総合センター 診療支援部 心療科(心理), 3.あいち小児保健医療総合センター 看護部(外来), 4.あいち小児保健医療総合センター 看護部(小児心臓病センター), 5.あいち小児保健医療総合センター 循環器科)

キーワード:プレパレーション, ディストラクション, 病棟保育

【背景】薬物療法抵抗性の重症心筋症は心臓移植適応となる.ドナー不足の日本で移植を受けられるのは補助人工心臓装着例や強心薬持続点滴投与例などのstatus 1患者のみであり,体格の小さな小児では入院待機例に限定される.また,自閉スペクトラム症が背景にある子どもは特性として強いこだわりがあり,検査や治療,入院生活の受け入れが困難である.【症例】4歳男児.2歳11ヵ月時,著明な浮腫を契機に拘束型心筋症と診断された.高度の肺高血圧を伴う重症心筋症で,PICUで6日間の呼吸循環管理を経て一般病棟へ転棟した.元来のこだわり傾向により,医療ケア,看護ケアを施行することに困難があった.児は移植適応と考えられたが入院生活を嫌がり,その姿を見ていた両親は長期に及ぶ入院が必要な移植医療に迷いが生じ,一旦退院した.家族の想いを診療チームで共有し,児の特性を踏まえ,お試し入院を提案し児が入院生活を受け入れられることを目指すことにした.入院中は児の特性を考慮し,予定を視覚的に示すスケジュールボードを保育士が作成.保育士と共にゲーム感覚で予定した検査等が実施できるように仕掛けを施し,実施できたらご褒美を準備した.その結果,児も両親も前回入院時のような苦痛は軽減した状況で過ごすことができた.診療チームと両親で再度移植治療について話し合い,心臓移植を目指した入院治療を開始できた.入院後も視覚的ツールを用いたプレパレーションと処置時のディストラクションを保育士が取り入れながらstatus1として移植待機中である.【考察】課題を多職種で共有し,児の特性を踏まえてスケジュールボードによるプレパレーションを導入,試行錯誤しながら更なる安心感に繋がるよう支援を継続した.またスケジュールボードを機に医療者が児の理解を深め,チームの団結力も高まった.患児や家族のニーズに合わせた支援には各専門職間の連携が不可欠である.