The 59th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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一般口演

心血管発生・基礎研究

一般口演(III-OR25)
心血管発生・基礎研究

Sat. Jul 8, 2023 9:10 AM - 10:10 AM 第7会場 (G314+315)

座長:加藤 太一(名古屋大学大学院 医学系研究科成長発達医学), 座長:平田 康隆(東京大学病院 心臓外科)

[III-OR25-02] シャーガス病の病態における、心筋細胞初期応答が持つ生体防御的意義の理解

中釜 悠1, Candray Katherine1, 伊藤 正道2, 中釜 瞬3, 嶋田 淳子4, 城戸 康年1 (1.大阪公立大学 大学院医学研究科 寄生虫学, 2.東京大学 大学院医学系研究科 循環器内科学, 3.東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 循環制御内科学, 4.群馬大学 分子細胞寄生虫学)

Keywords:Chagas病, バイオマーカー, iPS心筋

【背景】シャーガス心臓病(CHD)は、Trypanosome原虫感染による悪性心筋症である。流行国では、年20-50件の新規感染が記録され健康被害をもたらしているが、病勢を反映するバイオマーカーを欠く本症では、予後予測に基づく精密治療が妨げられている。【方法】ヒトiPS細胞由来心筋細胞(iPSCM)にTrypanosomeを感染させたCHDモデルを用い、感染ストレスに対する心筋初期応答シグネチャを、インピーダンス測定(RTCA eSight)、motion vector解析 (SI8000 Imaging System,) 、Caイメージング(FDSS/μCELL)、遺伝子発現などマルチモーダルに解析した。臨床的意義の検証のため、CHD患者コホート(186名、中央値47.5歳)を組織し、血清因子と臨床指標との関連を解析した。【結果】Tc I/II遺伝子型Trypanosomeは、顕著な宿主細胞変性効果を引き起こし、その強毒性はCHD-iPSCMにおいてリズム、収縮・弛緩異常(p<0.01)として表出された。Trypanosome感染により1000以上の遺伝子が発現変動し、CHDに特徴的なケモカイン発現パターンが見出された(p<0.001)。CHDコホートの解析では、65%が前臨床期の慢性感染者で、35%に顕性CHDを認めた。TGFβファミリー関連新規因子は、CHD患者血液においても顕性CHD群で高値を示し(p<0.01)、疾患予後を規定する可能性が示唆された。【結論】心臓組織実質細胞は病原体エンカウンターのセンチネルであり、感染ストレスに対する心筋初期応答が全身防御反応の最上位を成す。心筋由来タンパクの病態生理的意義について、異種共培養系により検証中である。患者コホートを、前向き予後追跡研究へと発展させ、分子シグネチャの臨床的意義付けを強化したい。