[III-OR25-04] 両心室心筋緻密化障害の臨床遺伝学的特徴の解明
キーワード:心筋症, 心筋緻密化障害, 遺伝子
【背景】心筋緻密化障害は主に左室心筋に見られるが、しばしば右室にも著明な肉柱形成を認める症例を経験するが、報告例は少ない。【目的】両心室心筋緻密化障害(BiVNC)の臨床遺伝学的特徴を明らかにすること。【方法】2013年10月から2021年12月までに当院で遺伝学的検査を施行した小児の心筋緻密化障害の症例を対象とした。右室心筋が非緻密化層/緻密層比が3以上をBiVNCと診断し、BiVNC群と非BiVNC群と後方視的に比較検討を行った。【結果】心筋緻密化障害は239例でそのうち25例がBiVNC(男児17例、女児8例)であった。診断時年齢は中央値0ヶ月であり、非BiVNC群(中央値7ヶ月)より若年であった(p=0.0002)。家族歴は5例(20%)に認めた。死亡は1例のみであった。不整脈は7例(28%)に認められ、非BiVNC群より低頻度であった(p<0.0001)。心臓超音波上、左室駆出率は47.1±23.7%であり、非BiVNC群(49.9±17.9%)と有意差は認めなかったが、BiVNC群では非BiVNC群に比べ、左室側壁の壁運動異常(24.0% vs 6.1%, p=0.0076)と、左室心尖部の肉柱形成(92.0% vs 53.8%, p<0.0001)が顕著であった。病的遺伝子変異は12例(48%)に見いだされ、MYH7とTAZ変異が最も多く見出された。死亡および心臓移植に対するロジスティック回帰分析では、左室駆出率 50%以下および後壁の壁運動異常が独立したリスク因子であり(それぞれオッズ比2.98×107、4.93、P<0.0001、0.0299)、入院に対しては、両心室心筋緻密化障害、家族歴、完全房室ブロック、左室駆出率 50%以下がリスク因子であった(それぞれオッズ比4.59、0.096、1.39×107、3.238、P=0.0097、0.0076,0.045、0.045)。【結語】BiVNC群では若年で診断されることが多く、壁運動異常が高率で認められた。BiVNC群では予後は比較的良いものの、入院のリスク因子となりうることから、慎重にフォローアップしていくことが重要と思われた。